1800店舗のおしぼり回収データと認知症患者向け家族の声AI電話、ひろしまAIサンドボックスの異色プロジェクト

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倫理面にも配慮されている。会話内容は厳重に管理され、契約解除時には必ず廃棄。AIの不適切発言を防ぐ制御も実装。すべての会話内容は家族に報告され、透明性を確保する。「技術的課題、倫理的課題、介護的課題、コンプライアンス。すべてを同時に解決しなければならない、非常にチャレンジングなプロジェクト」と清水氏は語る。

老人介護施設での実証実験を通じて、実用化への道筋をつける計画だ。

デジタル企業100社超が集積——広島県が描くAIの未来

この2つのプロジェクトに代表されるように、広島県のAIサンドボックスが目指すのは、足元の課題をAIで解決することだ。おしぼりデータも認知症ケアも、地味かもしれないが確実なニーズがある。

「ひろしまAIサンドボックス」は地元企業とAI企業を結び付けて新たな取り組みを行う企画だ(筆者撮影)

2018年から「挑戦する土壌づくり」と「デジタル企業集積」を目指してきた広島県のサンドボックス事業。7年目の今年、AIに特化した理由を湯﨑英彦知事はこう語る。「AIはまだ誰もがフラットなスタートラインにいる。今から参入しても十分追いつける」。スタートアップ経験を持つ知事ならではの、時流を読む判断だ。

GoogleやOpenAIのような基盤技術は別として、応用分野ではまだチャンスがある。「失敗を恐れずチャレンジしてほしい。成功することが重要なのではない」。通産省を経て、ADSLベンチャーのアッカ・ネットワークスを共同創業し副社長として上場に導いた知事ならではの言葉に、重みがある。

広島県の湯﨑英彦知事(左)

効果は着実に表れている。「すでに100社を超えるデジタル系企業が広島に拠点を設けてくれている。『広島は何かやっている』という認知が、業界内で上がってきている」と湯﨑知事は手応えを語る。2018年から始まったサンドボックスは108件の実証を経て、今回のAI特化へと進化。若者の県外流出が続く中、「広島=デジタルイノベーションの地」というブランドが、新たな人材を呼び込む力になりつつある。

2026年2月の成果発表会までに、20プロジェクトがどんな結果を出すか。成功事例は全国展開され、失敗事例も貴重な知見として共有される。地方創生の新モデルを作る広島県の挑戦は、他の自治体にも波及効果をもたらすだろう。

石井 徹 モバイル・ITライター

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いしい とおる / Toru Ishii

1990年生まれ。神奈川県出身。専修大学法学部卒業。携帯電話専門媒体で記者としてのキャリアをスタート。フリーランス転身後、スマートフォン、AI、自動運転など最新テクノロジーの動向を幅広く取材している。Xアカウント:@ishiit_aroka

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