1800店舗のおしぼり回収データと認知症患者向け家族の声AI電話、ひろしまAIサンドボックスの異色プロジェクト

レジデータではなく、おしぼりデータを使う理由がある。レジのデータは売上情報を含むため、契約から実際のデータ受領まで3カ月以上かかることもある。一方、おしぼりデータは配送会社の業務記録なので、すぐに活用できる。
サービスは月額制で提供予定だ。飲食店は3つのメリットを得られるという。来客予測による仕入れ最適化でフードロス削減、在庫管理の改善、そして「明日は2人で回すか、3人で回すか」といったシフト管理の最適化だ。適切な人員配置により、スタッフも効率的に働ける環境が整う。
全国のおしぼり配送会社と連携すれば日本中に展開可能としている。将来的にはレジデータと組み合わせた、より精緻な予測も視野に入れている。
認知症ケアの新境地 家族の声をAIで再現する挑戦
株式会社オノゴロが医療法人松栄会と開発する「AI自動電話応答ケアサービス」は、認知症患者からの頻繁な電話にAIが家族の声で応答する。開発のきっかけは社員の実体験だった。
「社内に認知症患者の家族を持つ社員が複数いて、1日に何度もかかってくる電話への対応が、精神的にも時間的にも大きな負担になっていました」とオノゴロの清水真一マネージャーは語る。2022年からのAIブームと、この社会課題を結び付けたのが始まりだった。

技術的な特徴は手軽さにある。家族の声を1分以上録音するだけで、AIがその人の声質を学習し再現する。専用ウェブページで表示されたテキストを読み上げるだけでよい。
最大の技術的課題は「待たせないこと」だ。「時間をかければ精緻な音声合成は可能だが、電話での会話では相手を待たせられない」と清水氏は説明する。リアルタイムでの応答と自然な会話の両立が、開発チームの最大の挑戦となっている。
性格の再現については、完全な再現は困難なため、家族が「優しい」「明るい」といった特徴を選択式で設定する仕組みを採用した。
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