線路で「太陽光発電」、日本の鉄道に導入できる? 2本のレールの間にパネル設置、スイスで実証実験

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そこで、スイスのスタートアップ企業、Sun-Ways(サンウェイズ)社は、鉄道の線路に着目し、2本のレールの間にソーラーパネルを設置し、多くの電力を生み出す仕組みを開発した。ソーラーパネルを搭載した専用車両が、走行しながらピストン方式でレール間にソーラーパネルを設置する。アンカーロッドで固定することで、時速約150kmの列車の通過や、時速240kmに達するような突風が吹いても、耐えられることが実験で確認された。

設置作業は、列車が走っていない夜間に行うが、1晩で約1kmの設置が可能という。ソーラーパネルの電気は直流のため、交流を使用する路線では、パワーコンディショナーにより交流に変換して近くの架線に送電を行う。

すでに2023年からテストが開始され2024年10月にはスイス運輸省がシステムを承認しており、ヌーシャテル公共交通221線ビュット駅付近の100m区間に48枚のソーラーパネルを設置し、2025年4月に実証実験が行われた。

以上が、レール間を利用した太陽光発電システムの概要である。このシステムは日本に導入が可能なのか。サンウェイズ社を創業したジョセフ・スクデリ氏への取材を踏まえ、その点について考察してみた。

線路設備への影響は?

まず、スクデリ氏との一問一答から。

――ソーラーパネルは取り外すことができるのか?

鉄道路線は保守が必要なため、ソーラーパネルを取り外す必要があるので、このシステムはメンテナンスのために取り外すことができるように設計されている。大規模なメンテナンスでは、 1日目に取り外し、2日目に保守作業が行われ、3日目に再設置される。スイスでは、幹線の保守作業は2年または3年、ローカル線の保守作業は5年と定められているため、この規制を守れば、太陽エネルギーに大きな影響はない。

ソーラーパネルは、3枚が1つのフレームに装着されている。約6mの長さで、一部分の保守では、このフレームを線路に沿って移動させることで作業が可能だ。この移動に要する時間は10~20分ほどだ。

――線路間の安全装置やその他の設備への影響は?

線路の間にはATS装置などの安全装置が設置されているが、予防措置として、センサーから少なくとも5m離れて設置すれば、問題はない。

――メンテナンス時の感電リスクはどうか?

すべてのケーブルはパネルの内側に固定されているため、感電の心配はない。

――枯れ葉などの異物に対しては、どのような対策をしているのか?

枯れ葉やその他の破片がソーラーパネルに付着した場合の対策は、列車にブラシを装備したり、圧縮空気を噴射したりするなどの対策が講じられている。

――運転士の視覚への影響は?

ソーラーパネルからの反射が動体視力に与える影響は、特殊なコーティングを施すことによっても軽減できる。

サンウェイズ社のスクデリ氏(写真:Sun-Ways社)
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