日本企業に巣くう「クローニー資本主義」の問題点とは?「身内ノリ」が非合理的な経営戦略を招いている!

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といったもっともらしい説明を付け加えたところで、コーポレートガバナンス・コードの要請に合わせて頭数を合わせるために、無難な人選で切り抜けようとしているかのような印象は拭い切れません。

社外取締役の実行力強化を

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株主のために企業価値を高めるという、社外取締役の本来の役割を全うするためには、しがらみにとらわれずビジネスや財務の状況を客観的かつ冷静に分析する能力のある人材が選任され、その能力を発揮できる環境を確保することが大前提となります。

もちろん関連会社、取引先、銀行といった広義の「身内」から抜擢された人材は、会社のために尽くすという彼らなりの誠意を示そうとするかもしれません。しかし彼らにとっての「会社のため」とは結局のところ「経営陣のため」と同義です。

そもそも経営陣の利益と株主の利益の区別を彼らが理解しているかどうかさえ、心もとないところがあるくらいです。

さらに、経営陣のメンバーの選び方にも問題があります。指名委員会等設置会社制(4.2%)をとっている会社は指名委員長は往々にして社外取締役から選ばれるため、まだ独立性があると言えます。

一方、日本の上場会社の大部分は、監査役会設置会社(全体の53.7%) および監査等委員会設置会社(42.1%)の形式であるため、取締役を指名できるのは、基本的には経営陣なのです。

経営陣の判断に対して頻繁に疑問を投げかける取締役は、それがどれほど建設的な意見であったとしても、経営陣の側から見れば、目の上のたんこぶ的な存在でしょうから、反対に、何でも賛成してハンコを押してくれる取締役の方を選ぶ傾向が強まってしまうのです。

社外取締役も、次の年にクビにならないよう保身に走り、自分の意に反して経営陣に賛同してしまうといったことがあっても、おかしくはないでしょう。

私自身も社外取締役の経験者として、現在のシステムのさまざまな限界を目にしてきました。各企業がクローニー資本主義の足枷を振り払い、事業構成の見直しを果断に進めるためには、社外取締役の機能を強化するための、より実効的な施策の新設に向け、真摯な改善案の検討が進められてもよいのではないでしょうか。

ワイズマン廣田綾子 作家

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わいずまん ひろた あやこ / Ayako Hirota Weissman

東京都生まれ。国際基督教大学卒業。1983年、スイスの経営大学院IMDでMBAを取得。84年に渡米後、証券アナリストに。87年より米国株投資担当のファンドマネジャーとして年金基金や労働組合等の米機関投資家の資金運用に携わる。2000年よりヘッジファンドに移籍し、日本株のロングショート戦略で資金運用を担当。10年より現在在籍しているホライゾン・キネティックス社でアジア戦略担当のディレクターとして、日本を含むアジア市場での運用担当に。Nippon Active Value Fund の社外取締役。SBIホールディングス、東芝で社外取締役を歴任。CFA資格取得者。現在、米国ニューヨーク州在住。

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