長屋はセーフティネットでもある
「京島に越してきてすぐは、私も長屋に住んでいました。隣の家と壁一枚でつながっているから、テレビの音なんかもよく聞こえるんです。
隣にはおばあさんが住んでいたんだけど、毎日夜の9時になったらテレビを消して、明かりを消して寝る。
ある日、私は仕事で遅くなって夜の11時くらいに帰ってきたんです。そしたら、隣の家のテレビも明かりも点いている。いつもは寝ている時間なんです。
普段は寝る前に閉めている通りに面したカーテンも開いていて、引き戸を開けたらおばあさんが倒れていました。慌てて救急車を呼びましたよ」(紙田さん)
これぞ長屋の付き合いだ。「私に同じことが起こっても、近所の人がなんとかしてくれる。そんな安心感がこの街にはありますね」と紙田さんは笑う。
人情なんて、目に見えないし数字にもできない。けれど、この街を歩いていると、そこかしこで人のぬくもりが顔を出す。便利さや華やかさでは測れない「住みやすさ」が、たしかにここにはある。京島は、そんな“住むと、ちょっといい街”なのである。
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