「声優人気」の光と影 アニメ”大ブーム”で露出増加の一方、”週刊誌報道の標的”にも 

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そうした盛り上がりがクライアント側の目にもとまり、そこから新たなドラマやCM、映画などへの出演機会が生まれていくというサイクルも生じているのでしょう。

これらは、2020年以降に改めて声優の持つポテンシャルに世間が気づき、その人気や求心力が人々に知られた結果生じたポジティブな側面です。一方、そうした人気の“光”は、声優業界にこれまでなかった“影”を落とすことにもつながっています。

声優人気の影:週刊誌による脅威と過労

現在では声優という職業は、アイドルやタレントと同様に、週刊誌にプライベートを狙われる存在になりました。

10年前であればほぼ見かけなかった声優関連の週刊誌報道が、ここ数年でかなり増えてきていることは、多くの人が実感しているところだと思います。スキャンダルばかりが目立って見過ごされがちですが、一方で何もしていない声優も、日々の生活や家庭事情といったプライベートな領域が侵害されるようになってしまったのです。

正直なところ、アニメファンや声優ファンに、そうしたスキャンダルや公にされていないプライベートの情報を求めている人はほとんどいないと思います。需要がないのにそうした報道が増え続けている一因には、声優関連の話題とSNSの相性が良いばかりに、“数字が伸びる”と認識されてしまったこともあるのでしょう。

活躍の場の拡大やプライベートが脅かされるストレスは、これまで以上の心労や疲労を生み出すのか、心身の不調で休養や活動休止をする方も最近は少なくありません。ただし、身体を壊してまで活動の幅を広げることが問題視されたことで、”無理なら休む”という選択肢ができたことを前向きにとらえる見方もあります。

声優という職業が生まれてから、さまざまな変化やブームが幾度も生じてきましたが、2020年以降のアニメブームを経た今もまた、業界はかつてない過渡期を迎えているといえます。

世間に広く認知されて活動の場が増える一方、それに伴う新たな脅威が生まれたことで、声優や事務所関係者も、前例や答えのない問題と日々直面している状況なのです。

しかしそれでも、昨今のアニメブームや声優人気を鑑みると、アニメファン憧れの職業でもある声優志望者が減ることはないように思います。ただ、今後はそうした志望者や声優本人にも、自身や関係者を守るためのコンプライアンスやネットリテラシーといった新たな素養が、本職の技能に加えて必須となりそうです。

加えて、アニメの現場とは文化の異なるテレビ番組への出演対応や、週刊誌報道への対応など、今後は声優事務所に求められるものもますます変化していくことが予想されます。

華やかな側面ばかりに目がいきがちですが、業界全体は今どのような課題や変革に直面しているのか。アニメ文化を支えるひとつの柱でもある声優文化がより一層広く知られていく中で、今後はそうした機微にも社会的な注目が集まっていきそうです。

小新井 涼 アニメコラムニスト

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こあらい りょう / Ryo Koarai

アニメコラムニスト。北海道大学観光学高等研究センター研究員。博士(観光学)。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を10年以上継続中。様々な媒体へのコラムの寄稿や番組へのコメンテーター出演をする傍ら、学術的な観点からもアニメに関する研究をしている。近年はその知見を活かし、クランチロール・アニメアワードや声優アワードで審査員や選考委員も務める。著書に「鬼滅フィーバーはなぜ起こったか? データで読み解くヒットの理由」(インプレス)。

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