「公園で博打」「路上で麻薬の売買」「結核と赤痢が流行」大阪ドヤ街《西成》の今をルポライターが解説
露店も厳しく取り締まられ、現在では早朝の短い時間に弁当屋が出る程度となった。病院で買ってきた向精神薬や睡眠薬を売る露店も最近まで存在したが、摘発されてしまった。前を通ると、代わりにビオフェルミンなどの錠剤が1シート100円で売られていた。露店商人は、「こんなんじゃ全然金にならへんわ〜」と嘆いていた。泥棒市で買い物を楽しみにしていた人には、残念な状況である。

昔に比べると、この辺りでも若者や女性の姿もちらほら見かけるようになった。西成のカルチャーを好む女性もいて、とにかく安く飲める。そして、居酒屋の酒がとにかく濃い。ウーロンハイを頼んでも、ほとんど焼酎しか入っていないのでは?と思うほどなのだ。
「なんでこんなに濃いんですか?」と尋ねると、「薄いと殴られるんや」とのこと。納得の理由だ。
急増する中国系のカラオケ居酒屋
西成の酒場といえば、派手な看板を掲げるカラオケ居酒屋も流行っている。現在、西成では猛烈な勢いで中国資本による土地買収が進んでおり、その跡地にカラオケ居酒屋が建てられているのだ。
それらの居酒屋にはうなぎの寝床のように縦長の店内にカウンターがあり、キレイめな中国人女性が働いている。人気があり、どの店も賑わっている。わざわざ遠方から飲みに来る人もいるようだ。
基本的には、少し安く、楽しく飲める店が多い西成の飲食店だが、色々と悪い取引が行われているという噂もある。犯罪的行為に一切関わりたくないという人は、そうした店には近づかない方がよいだろう。

治安面で最も気になるのは麻薬問題だろう。さすがに昔のように路上に立って、販売している人の姿はほとんど見かけなくなった。ただし、麻薬販売がなくなったわけではない。警察が取り締まりを厳しくしたので、販売方法を変えただけだ。
コロナ禍では、海外から入ってくる覚醒剤の量が減っていたと聞いたが、その後は「かなりの量が入ってきた」みたいな話を耳にすることもあった。普通の飲食店で売ったり、オンラインで売ったり、なんのかんのいまだに蔓延っているのが現実だ。

最後に、健康面の問題について。西成警察にインタビューをした際、「西成では結核と赤痢が流行しているので気をつけてください」と言われた。生活困窮者が多く、健康状態を維持できない人が感染しやすいためだという。外国人観光客や労働者の増加に伴い、感染リスクも高まっているとのことだった。
西成に泊まったからといってすぐに感染するわけではないが、衛生面に注意して生活するに越したことはない。
結局、西成は見た目ほどは変わっていない、というのが僕の印象だ。今でも暗部はしっかりと残っている。「もう安全な街になったんだ!」と安心しきらず、訪れるならそれなりに緊張感を持って過ごすのが賢明だろう。
(村田らむ=文・写真 池田裕美=編集)
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