厳密にはEUとして安全保障・防衛パートナーシップを締結した加盟国、他の候補国および潜在的な候補国、その他の第三国にも可能性は開かれているが、基本的には域内で使用される防衛支出が拡大するという話である。
これまで安定・成長協定(SGP)の制約下で拡張財政路線が温存されていた経緯を踏まえれば、EUの潜在成長率がSAFEで押し上げられる期待は当然ある。
危機が結びつきを強めてきた
アメリカの初代財務長官であるアレキサンダー・ハミルトンが各州の債務共通化(財政統合)に奔走し、今日の米ドルの礎を作ったことにちなんで、財政統合による合衆国誕生の瞬間を「ハミルトン・モーメント」と呼ぶことがある。
EUでは2021年5月、パンデミック後の復興のため、総額7500億ユーロの共同債券(以下NGEU債)発行を通じた資金調達が法的に可能となった。このNGEU債が、欧州版のハミルトン・モーメントに発展するのか。当時の本欄では大いに注目した経緯がある。
もちろん、NGEU債の初回発行からまだ4年程度しか経過しておらず、発行計画は2026年まで続くため、それがEU統合をもたらす触媒になったのかどうかはまだ判断できない。
しかし、パンデミックがそうした大きな歩みを可能にしたのと同様、今回の再軍備も同じような効果が期待されるところである。
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