≪脱サラして「専業神職」になった43歳≫“知られざる業務”で得た、勤め人時代とは違う幸せと楽しみ

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「神職が身近にいた人とは違って、一般家庭から神職になった人の中には、時には早朝や深夜まで及ぶ祭事を“労働”ととらえ、『なぜ休日出勤や時間外労働をしなければならないのか』『こんなに長時間拘束されるのか』と思う人もいます。そのギャップがなかなか埋まらない課題もあります。当然、会社員のほうが“労働環境”はよいので、大学で神職資格を取得しても民間企業に就職する人が少なくないのです」

さらに、基本的に神職は“儲からない職業”という問題もある。

「一部の大きな神社はともかく、民社(地域の神社)のお賽銭は年間で数千円程度です。宮司は氏子さんが負担してくださる年俸をいただいていますが、これも民社だと年数万円程度です。だから、ほとんどの神社の宮司は、食べていくためにほかの仕事もしている兼業神職なんです」

とはいえ、サラリーマン勤めの傍らの兼業神職ができることは限られる。

「定年退職した後に、どこかの神社の宮司を務めることもあるかなとは思っていました。でも、その時には教えてくれる先輩神職が誰もいなくなり、神事や作法を継承できず手遅れになっているかもしれない」

そして、奉仕する浅間神社の宮司からも「そろそろ覚悟を決めてはどうか」と促され、勝又さんは妻と1カ月近く話し合った末、「生活は不安定になるかもしれないが、先輩たちが健在なうちに神職として力をつけて地域に貢献したい」と専業神職として生きる決意を固め、2019年に商工会を退職した。

コロナ禍に突入して貯金を取り崩す覚悟

その数カ月後、折悪しく世間はコロナ禍に突入。先が読めない日々の中、勝又さんは貯金を取り崩すことも覚悟した。

「コロナ禍でも例祭は執り行われたので、ほかの神社の祭事をお手伝いしたり、神職が留守の際のご祈祷番などを積極的に引き受けました。また、予想外の戸建て需要によって地鎮祭を依頼されることもあり、結果的には勤め人時代と同程度の収入を確保することができました」

コロナ禍での専業神職1年目を何とか乗り切り、その後は県東部神道青年会の会長を務めるなど若手神職として活躍。また、御殿場市近隣は国内でも数少ない神式葬儀が主流の地域ということもあって、さまざまな場面で地域に寄り添いながら神職の務めを果たしていった。

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