大切なプレゼンで頭が真っ白に! 「準備は万端だったのに…」、なぜ人は思い通りに行動できない? 元トッププロポーカープレイヤーが解説
人間よりも圧倒的に強い力を持つクマとの遭遇は、私たちが本来持つ「生存本能」を刺激します。この本能的な反応を引き起こすときに中心的な役割を果たしているのが、脳の中にある「扁桃体(へんとうたい)」という部分です。命の危険を感じたとき、扁桃体は瞬時に反応し、全身に危険信号を送り出します。
この信号によって、心拍数が上がり、筋肉が硬直し、冷や汗が流れるといった体の反応が引き起こされます。これらの反応はすべて、命の危機に直面した際に即座に逃げるため、あるいは戦うために、体を最適な状態にするものです。
一方で、「理性」をつかさどるのは、脳の前方に位置する「前頭前野」です。普段の生活では、前頭前野が中心となって理性的に物事を判断しています。しかし、クマに遭遇するような非常事態では話が違います。
扁桃体が強く反応し、脳全体を「扁桃体優先モード」に切り替えてしまうのです。そうすると、扁桃体は事実上、脳の中で最優先の指揮権を握り、理性をつかさどる前頭前野の働きを抑え込んでしまいます。

なぜ、理性が後回しにされるのでしょうか?
それは、扁桃体の反応が生存のために「スピード重視」であるからです。例えば、クマを前にして「この斜面の角度は何度で、どう走ればいいか」と冷静に計算している暇はありません。そんなことをしていたら、逃げ遅れてしまいます。
このように、扁桃体が「情動」をつかさどり、前頭前野が「理性」をつかさどる中で、命の危険を感じるような非常事態においては、扁桃体が脳全体を支配します。一度、扁桃体に乗っ取られると、理性的な判断ができなくなってしまうのです。これが、「情動が理性を支配する」という仕組みです。
扁桃体が日常生活で誤作動する
とはいえ、現代の文明社会に生きる私たちにとって「クマに遭遇する」ような命の危機に陥ることはそう頻繁にはありません。ですが、「情動が理性を支配する」というこの脳の仕組みは、時として、命の危険がないにもかかわらず作動してしまうことがあります。
例えば飛行機恐怖症の人が、機内の座席で不安と恐怖に包まれ、パニック発作を起こしているとします。
この人に対して、飛行機は安全で、今そこまで恐れる必要はないことを伝えるために、「飛行機事故で乗客が死亡する割合は、あなたが普段運転している自動車事故の死亡率のたった10万分の1しかありませんよ」とファクトベースで説明してみたところで、その人のパニック状態は治まりません。
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