アメリカ技術輸出の見返りに「総額285兆円」投資と「豪華な大統領専用機」──AI大国を目指す中東諸国のなりふり構わぬトランプ操縦策

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これらの出来事を経て今年5月13日、トランプ政権下の商務省は「AI拡散規則」を撤回すると発表した。その公式理由は「過度な規制は(AI開発のような)イノベーションを阻害し、外交関係にも悪影響を及ぼす」というもの。今後数カ月以内に(トランプ政権による)新たなAI輸出規制を発表する予定だが、基本的には一律のルールよりも国別交渉による柔軟な輸出管理にする方向と見られている。

同日、サウジアラビアの首都リヤドに到着したトランプ大統領一行はその後3日間にわたる中東歴訪を通じて、UAEやサウジなど湾岸諸国との間で(前述の)巨額AIディールを次々とまとめあげていった。

いずれアメリカを抜き去るとの見方も

これらのディールを通じてトランプ政権は、NvidiaがUAEに最新GPU「Blackwell」を最大で年間50万個輸出することを許可した。そのうち10万個は(シェイク・ターヌーンが会長を務める)G42に供給されることが決まった。

また両国共同でアブダビに世界最大級のAI開発キャンパスを建設することでも合意した。その一環として、G42がOpenAIやNvidiaなどアメリカ企業と共同で当初は電力量1ギガワット、最終的には5ギガワットの巨大データセンターを建設する「StargateUAE」プロジェクトが発表された。この建設資金はG42(つまりUAE)が負担する。

これはかつて2024年にシェイク・ターヌーンが前バイデン政権に提案して却下された(前述の)巨大プロジェクトとほぼ同じ内容で、今回トランプ政権はあっさりそれを許可したことになる。

またサウジアラビアに対しては、NvidiaやAMDなどから(推定で)年間数十万個のGPUが供給されることも決まった。中でもサウジのAIスタートアップ企業「Humain」はNvidiaのBlackwell GPUを当初1万8000個輸入し、ゆくゆくは数十万個の追加導入を予定している。これらを使って、2034年までに総電力量6.6ギガワットの巨大データセンター建設を計画しているという。

これらのディールについて、アメリカの政策系シンクタンク関係者らからは懸念の声も聞かれる。一つには以前から指摘されている湾岸諸国と中国との関係だ。

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