アメリカ技術輸出の見返りに「総額285兆円」投資と「豪華な大統領専用機」──AI大国を目指す中東諸国のなりふり構わぬトランプ操縦策

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たとえば(UAEの)G42は以前から中国の巨大IT企業Huaweiから通信機器を導入するなど、中国の企業・政府との密接な関係を結んできた。前バイデン政権の圧力に屈し、G42はそれらの関係を断ち切ったと表明しているが、裏では今でもつながっているとの見方もある。

またトランプ政権がOpenAIやNvidiaの先端技術・製品をUAEやサウジに輸出することを許可したことにより、いずれこれらの湾岸諸国がアメリカをしのぐAI大国になると予想する専門家もいる。トランプ政権の内部にも匿名を条件に「2029年には、UAEがアメリカを抜いて世界最大のAI開発センターになる」と認める高官もいる。

AI大国への野望は本当に実現できるか

今年1月、中国のスタートアップ企業「DeepSeek」がOpenAIのChatGPTに匹敵する高度な生成AIを公開して話題になった。が、それはアメリカ企業が開発した先端AI技術が「知識蒸留」と呼ばれる特殊な手法により、中国など外国の企業によって比較的容易にコピーされる可能性も露呈した。

これにより低コストでアメリカに対抗する道を切り開いた中国のスタートアップに脚光が当たる一方で、今後世界のAI開発競争は(簡単にコピーされてしまう)技術力よりも、むしろ資金力の勝負になるとの相反する見方もある。となると、潤沢なオイルマネーに支えられたサウジやUAEなど湾岸諸国は有利だ。

他方で、これら中東地域は言論の自由や女性の権利に対する制限、あるいは移民労働者の人権問題、同性愛など性的マイノリティに対する差別、さらには酷暑(夏季には最高気温が摂氏50度に達する日も珍しくない)など、世界をリードするハイテク先進国となるには不利な条件(課題)もいくつか抱えている。

AI大国に向けたアラブ指導者層の意気込みや天文学的な巨額資金は事実として認めるにしても、実際にその野望を実現できるどうかは別の問題として考える必要がありそうだ。

小林 雅一 KDDI総合研究所リサーチフェロー、情報セキュリティ大学院大学客員准教授

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こばやし まさかず / Masakazu Kobayashi

東京大学理学部物理学科卒業、同大学院理学系研究科を修了後、雑誌記者などを経てボストン大学に留学、マスコミ論を専攻。ニューヨークで新聞社勤務、慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所などで教鞭を執った後、現職。著書に『クラウドからAIへ──アップル、グーグル、フェイスブックの次なる主戦場』(朝日新書)、『AIの衝撃──人工知能は人類の敵か』(講談社現代新書)、『生成AI──「ChatGPT」を支える技術はどのようにビジネスを変え、人間の創造性を揺るがすのか?』(ダイヤモンド社)など多数。

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