アメリカ技術輸出の見返りに「総額285兆円」投資と「豪華な大統領専用機」──AI大国を目指す中東諸国のなりふり構わぬトランプ操縦策
たとえばサウジアラビアの最高権力者ムハンマド・ビン・サルマーン王子がカリフォルニア州のグーグル本社を訪問した際には、同社共同創業者のセルゲイ・ブリン氏自らが王子を出迎えた。
また現UAE大統領(王族でもある)の弟としてハイテク政策の舵を取ると同時に、同国のAI企業「G42」の会長でもあるシェイク(指導者を意味するアラブの称号)・ターヌーン・ビン・ザイード・アル・ナヒヤンはOpenAIのサム・アルトマンCEOと会談し、次世代のAI半導体開発やデータセンターの建設などについて協議したとされる。
2024年、シェイク・ターヌーンは(当時の)バイデン政権の高官らと会談し、両国共同でUAEに(OpenAIなどアメリカ企業も使える)AI開発用の巨大データセンターを建設する計画を打診した。その資金は主にUAE側が負担するから、アメリカにとって悪いディールではないと持ちかけたのだ。
しかしバイデン政権はこの申し出を却下した。たとえ資金面で魅力的な提案でも、AIのような今後の安全保障に関わる高度技術を海外にアウトソースすることは得策ではない。
またいまだに「言論の自由」や「女性の権利」の制限など人権問題を抱えると同時に、ここにきて中国との深い結び付きが懸念されている、これら中東諸国に、(兵器開発などにも転用できる)AI技術を供与することは危険と考えたからである。
バイデン政権が定めた「AI拡散規則」とは
バイデン政権はその末期となる今年1月13日、「AI拡散規則(AI Diffusion Rule)」と呼ばれる包括的な海外へのAI規制策を発表した。そこでは世界全体の国々を「Tier1~3」のグループに分類し、それぞれ「GPU」や「クラウド・サービス」などAI関連製品の輸出を厳格にコントロールしていくことになった。
まずTier1には「アメリカ自身と英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド等いわゆるFive Eyes諸国、また仏、独、ベルギーなどNATO加盟国、ならびに(高度な半導体技術を有する)日本、韓国、台湾」など総計19カ国・地域が含まれる。これらの諸国には、(アメリカ企業が)GPUやAIクラウドなどの製品を無制限に輸出することが許可された。
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