窪田:どんなことが大変でしたか?
柿島:手術が終ってから、目を下に向けておくために、ずっとうつむいていないといけなかったんです。起きている時も寝ている時も、うつぶせの状態で。それが2週間続いたのは、地獄のようでした。
窪田:網膜剥離の手術では目の中にガスを注入して行うので、それを抜くために下を向いている必要があるんです。長時間、うつぶせ状態を維持しないといけないので、患者さんにとっては大きな負担ですよね。
柿島:入院中はうつ伏せ用の枕がありましたが、退院してからは自分でU字型のクッションを買ってきて、なんとかその体勢をとっていました。でも、やはり夜はよく眠れなくなってしまって。しかたなく、普段は飲まない睡眠導入剤を使っていました。
それと、手術の後はものの見え方が変わりました。歪みがひどくなってしまったんです。
ものが歪んで見える状態が1年続いた
窪田:術後は一時的に見えにくくなることがあります。歪んで見えるのも症状の1つです。
柿島:私の場合、しばらく人の顔が凹んで見えました。そうすると誰の顔かも分からなくて。「これがずっと続くのか」と思うと、激しく気分が落ち込んだ時期もありました。
ほかにも、四角いものの角が欠けて見えてしまう。例えばレンガの壁を見ると、その1つひとつが凹んで見えるから、ものすごく気持ち悪くて……。

窪田:ものが歪んで見えるのは、手術直後でまだ網膜が十分にピンと張っていなかったのかもしれないですね。網膜が少したわんでしまっていたというか。ちなみに、その症状は今もありますか?
柿島:いいえ、今はないです。でも、1年くらいは続きましたね。歪みがひどい時は、ピアノの鍵盤がぐにゃぐにゃに曲がって見えましたし、ギターの弦も、電灯の紐なんかも途中で曲がって見えました。見るものすべてがそんな感じなので、目をつぶって対処するしかないのがつらかったです。これから自分はどうなっちゃうんだろう、と心配になりました。