7月参院選は大きな試練に!「結党70年」を前に行き詰まる自民党、原因は"GPS"にあり

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これに対して、自民、公明両党と立憲民主党の代表者による修正協議が進められ、基礎年金をかさ上げする修正案がまとめられ、今国会で成立する予定だ。自民党は、年金という社会保障の軸となる政策で、妥当な改正案を練り上げられず、野党の力を借りるという力量不足をさらけ出したのである。

自民党はかつて、社会保障の財源を確保する必要があるとして消費税の導入を断行したり、自由貿易の旗振り役として農産物の市場開放を決断したりするなど、一時的に国民の痛みを伴う政策でも粘り強く説得を続けて実現してきた。しかし、最近はポピュリズム(大衆迎合)の風潮が広がり、痛みを伴う政策でも国民を説得するような場面は見られなくなっている。

第2次安倍晋三政権による金融緩和政策は、景気回復のための「カンフル剤」として導入され、日銀による巨額の国債購入が続けられた。自民党内の一部からは緩和政策の見直しを求める声も上がった。

だが、景気が後退すれば国民の不満が広がるという政権の判断から、異例の緩和政策は10年間も続けられた。この間、大企業が内部留保を拡大し、株式配当を増やしていった一方で、勤労者の実質賃金は伸び悩んだ。最近では、物価高で国民生活が厳しくなっているのに、自民党政権は有効な対策が打てないままだ。

世襲政治家の弊害 

そして世襲である。21世紀に入って自民党の首相は7人。小泉純一郎、安倍晋三(2回)、福田康夫、麻生太郎、菅義偉、岸田文雄、石破茂の各氏である。このうち世襲でないのは菅氏ただ1人。政権政党のトップをこれほど多くの世襲政治家が占めるのは、民主主義国では例がない。

自民党の衆院議員のうち、政治家の息子や娘婿などの「世襲議員」は3割にのぼる。コメ問題で辞任した江藤前農水相は2世議員、後任の小泉農水相は4世議員だ。代々引き継がれた後援会の支援を受けて、選挙は有利だ。一方で、後援会に集まる利益団体の意向を重視せざるをえないから、既得権を打破するような抜本的な改革は打ち出しにくい。それが自民党の「停滞」をもたらしていることは間違いない。

7月の参院選では、コメをはじめとする物価高に対する政策やアメリカのトランプ政権による関税政策への対応策、防衛費増額を含む外交・安全保障政策などが争点となる。その中で、結党から70年のほとんどの期間、政権を運営してきた自民党の政策や体質が厳しく問われなければならない。

星 浩 政治ジャーナリスト

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ほし ひろし / Hiroshi Hoshi

1955年生まれ。東京大学教養学部卒業。朝日新聞社入社。ワシントン特派員、政治部デスクを経て政治担当編集委員、東京大学特任教授、朝日新聞オピニオン編集長・論説主幹代理。2013年4月から朝日新聞特別編集委員。2016年3月からフリー。同年3月28日からTBS系の報道番組「NEWS23」のメインキャスター・コメンテーターを務める。著書多数。『官房長官 側近の政治学』(朝日選書、2014年)、『絶対に知っておくべき日本と日本人の10大問題』(三笠書房、2011年)、『安倍政権の日本』(朝日新書、2006年)、『自民党幹事長』(ちくま新書)など。

 

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