日本郵船社長、エネオスHDからの海運事業買収に続くM&Aに意欲。短期間で中核の海運事業拡大に

日本郵船の曽我貴也社長は28日、4月に国内石油元売りENEOSホールディングス(エネオスHD)から非中核の海運事業を取得したのに続き、同様のM&A(企業の合併・買収)を通じた事業拡大に意欲を示した。
曽我社長はブルームバーグのインタビューで、船舶の建造費が高騰し、船員などの人手が不足する中で質の高い船と人材を確保できたとして、「すごく良い案件だった」と振り返った。小規模事業者にとって脱炭素化に伴う費用を単独で賄うのは難しく売り手と買い手の双方が「ウィンウィン」になるとして、類似の買収案件を探しているという。
郵船の発表によると、エネオスHD傘下のENEOSオーシャンから原油タンカー以外の海運事業を約760億円で取得。液化石油ガス(LPG)船やケミカルタンカーなど計47隻を承継したことで、同社は世界最大規模のLPG船運航事業者になる。
今後も買収が進めば、短期間で中核の海運事業拡大につながる。ただ、国内競合の商船三井もM&Aには積極的な姿勢を示しており、優良案件は争奪戦となる可能性もある。
一方、懸念されていたトランプ関税の影響については、当初の想定よりも限定的となりそうだ。郵船は8日の決算発表で今期(2026年3月期)は経常損益で最大1000億円の下押し要因になるとの見方を示していた。影響が最も大きくなる恐れもあったコンテナ船部門では、米中が90日間の関税引き下げで合意したことで予約が急回復していることなどから、予想される押し下げ幅は縮小しているという。
また、米国は4月3日から輸入自動車に対する25%の追加関税を発動しているが、曽我氏はブッキング(船積み予約)について「全く落ちていない。3カ月先まで変化はないというのが今の状況だ」と話した。 関税による自動車輸送への影響を巡っては商船三井の橋本剛社長も、4-5月の段階では想定していた米国生産拡大に伴う輸送台数の減少は現実化しておらず、「ある意味うれしい誤算」と述べていた。
曽我社長のその他の主な発言:
- 米国は中国籍の船舶に入港料を課すという計画を掲げているものの、発注先から中国の造船所を排除することは今はまだ想定していない
- 米国の造船能力を日本や韓国並みまで引き上げるには人材育成などに長い期間がかかると思われ、米国で実際に船を発注できるようになるのは相当先になると見込む
著者:稲島剛史、佐々木礼奈
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