≪看護師の声なき悲鳴≫患者からの性的接触や暴力にさらされる医療現場の不都合な真実

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実際のところ、看護師の給与水準はどうなっているのか。令和6年度賃金構造基本統計調査から医師、薬剤師、診療放射線技師、看護師の給与の実態を検証してみよう。

ちなみに小・中学校教員(42.3歳)は年収約727万円である。

日本看護協会の「2024年 病院看護実態調査 報告書」によると、2交代制における月平均夜勤回数は4回超5回未満が最も多く33.0%、5~6回未満が20.1%となっている。9回以上13回未満という人が2.0%もいることに驚く。16時間以上に及ぶ夜勤を平均で5回こなして平均年収は小・中学校教員の7割の水準というのが実態である。

しかも、日常的にペイハラ(患者によるハラスメント)や院内感染の脅威にさらされている職業である。

ペイハラで離職を考える

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鳥取県が2024年12月に県内の病院と訪問看護ステーション全120カ所を対象に行ったアンケート調査では、回答のあった54カ所のうち50カ所でペイハラ事案があったと報告された。

ペイハラの例としては「長い待ち時間への苦情を大声で言う」「病状の悪化を看護師や病院のせいにする」「治療費や入院費の支払いを拒否する」「性的な言葉や身体的接触、私的に会うことを求める」など。

ペイハラに恐怖を抱いて、休職に追い込まれる職員もいるというから事態は深刻だ。そのため県では相談窓口を開設するなどの対策を取るようになった。

これは鳥取県に限った話ではない。2019年の日本看護協会の看護職員に対するハラスメントについての調査では、「意に反する性的な行動」(11.5%)、「身体的な攻撃」(17.9%)、「精神的な攻撃」(24.9%)などの被害報告があった。

「性的な行動」や「身体的な攻撃」は7割以上が患者から受けたものだった。さらに、暴力やハラスメントを受けた人の52.3%は離職を考えていると回答、受けていない人の41.7%を10ポイント以上も上回っている。

筆者自身が体験したことでもあるが、医療現場における高齢化は進む一方だ。それに伴い看護師をはじめとする医療従事者の負担がますます重くなるのは容易に想像がつく。十分なペイハラ対策と処遇改善策を実施していかないと、医療現場は崩壊に向かって突き進む一方である。

山田 稔 ジャーナリスト

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やまだ みのる / Minoru Yamada

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。雑誌『ベストカー』に「数字の向こう側」を連載中。『酒と温泉を楽しむ!「B級」山歩き』『分煙社会のススメ。』(日本図書館協会選定図書)『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』などの著作がある。編集工房レーヴのブログでは、最新の病状などを掲載中。最新刊は『60歳からの山と温泉』(世界書院)。

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