罰ゲーム化する管理職で生き抜く術「部下の異変に気づいたらどうする?」――部下やチームを立て直す2つのアプローチ

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先行き不透明な経済環境を嫌って、当時アメリカのIT企業は我先にとレイオフを始めていた。まだ入社後間もなかったにもかかわらず、花岡さんはそのあおりを受け、ある日突然に会社を追われたのだった。

僕たちが面接をしたのはその半年以上後のことで、その時花岡さんは「ガーデンリーブ」という形で前職に籍を残していた。

僕はこの人を採用すると決めた

これは転職活動を進めやすくするための温情のようなもので、実際のところ私はすでに同社をお払い箱になっています。そうはにかみながら正直に語る花岡さんの顔を見た次の瞬間には、僕はすでにこの人を採用する、と決めていた。

この半年間は転職活動をされていたのですか? そう尋ねると、驚くことにこれが初めての面接です、と言う。あれやこれやで精神的に参ってしまい、しばらくの間、茫然自失としてしまっていたそうだ。

本当につらかったのは、レイオフ自体ではなく、自分が間違った判断をした、という自責の念だったらしい。

新卒から20年以上務め、自分のみならず、家族の人生の一部のようにもなっていた前職。そんな住み慣れた家を捨て、宇宙ステーションのような未知の世界に飛び込んでしまった自分の選択は、果たして正しかったのか。

そう自問自答していた転職直後に、突然舞い込んできたレイオフの通知は、燃えたぎるコテで心に押しつけられた「不正解」の焼印のようだったという。

とにかく誠実な人だ。僕はそう思った。この経歴にこの人柄なら、今後ベンチャー・大手を問わず、行く先々でオファーを受けるに違いない。ヘッドハンターもそれは間違いない、と背中を押すので、気になるところはいくつか残っていたが、僕は満額回答で速攻のオファーを出すことにした。

多少予算オーバーだったものの、ファイナンスに加えコーポレート部門全体を合わせて見てもらうことで、自分のなかでその埋め合わせをすることにした。

入社後の花岡さんは、期待を裏切らない安定した働きぶりを見せてくれていた。自分より一回りも二回りも若い人に囲まれて仕事をすることになったわけだが、花岡さんは入社直後から驚くほど自然にチームに溶け込んでいた。

お払い箱になったIT企業では、周りは若いだけではなく、フランス人やポルトガル人やグアテマラ人でしたから。そう言ってはにかむ花岡さんを見て、僕は本当にいい買い物をした、と自分の採用力に自信を深めた。

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