“女性の人生”を考える映画4選、夫婦愛に格差社会、PMSや余命宣告……自分を後回しにしがちな令和の女性を前向きにしてくれる作品を紹介

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応募した助成金「グッゲンハイム・フェロー」からも落選してしまった。そんな時、奶奶がステージ4の肺がんで余命わずか、という知らせが飛び込んでくる。

『フェアウェル』(2019)
『フェアウェル』(2019) 監督:ルル・ワン U-NEXT/Hulu/Amazon Prime Video にて定額内で視聴可能(2025年5月26日時点) DVD発売中/発売・販売元:インターフィルム/© 2019 BIG BEACH, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.(写真:インターフィルム)

アメリカでは本人に余命宣告をするのが当たり前だが、逆に中国では、余命を本人に知らせないのが当たり前。ビリーの親族は、ビリーの従兄・浩浩の結婚式を口実に、奶奶の住む中国東北部の長春に集結することに。ビリーの両親は、感情的で噓がつけないビリーを置いて帰国したが、ビリーもクレジットカードで航空券を購入し、長春に向かった。奶奶との再会は嬉しくもあるものの、ビリーの心の中には、やはり奶奶を欺くことへの罪悪感が募ってしまう。

奶奶には、アメリカに移住した息子(ビリーの父)と、日本に移住した息子(浩浩の父)、そして中国在住の娘がいる。娘は、近々子どもをアメリカに留学させる予定だ。久しぶりの一家団らんだが、事情が事情なだけに盛り上がりに欠けるほか、それぞれ移住先の価値観に染まったきょうだいたちの足並みは揃わない。

浩浩の結婚式準備に追われる中、ニューヨークで目減りしてしまったビリーの自己肯定感は、自分のことを全肯定してくれる奶奶のおかげで少しずつ復活する。たとえ肉親でも、住む環境が違えば、考え方や価値観も変わっていく。一方で奶奶のように、離れていても絶対的な味方でいてくれる人もいる。余命宣告に対する考え方はそれぞれだが、奶奶との別れを悲しむ思いは一緒だ。

『フェアウェル』(2019)
『フェアウェル』(2019) 監督:ルル・ワン U-NEXT/Hulu/Amazon Prime Video にて定額内で視聴可能(2025年5月7日時点) DVD発売中/発売・販売元:インターフィルム/© 2019 BIG BEACH, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.(写真:インターフィルム)

果たしてビリーと親族たちは、奶奶に最後まで真実を隠し通すのか? テーマは重めだが、シリアス一色にならずむしろコメディタッチに仕上がっている作品なので、ぜひ気負わず観賞し、離れて暮らす大切な人に思いを馳せてみてはいかがだろうか。

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紅水蜜桃 編集ライター

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くれないの・すいみつとう

幼少期を過ごしたアメリカ西海岸でハリウッド映画と華人カルチャーに親しみ、16歳で香港映画にドハマりし、大学卒論では香港が誇る大衆迎合娯楽映画量産型監督・王晶を取り上げる。出版社勤務を経てフリーランスに。「with digital」(講談社)で香港映画・エンタメコラム『推しは香港に在り』(https://with.kodansha.co.jp/series/honkon)連載中。編集者・WEBディレクターとしても映画記事を多数手がける。香港を中心とした中華圏映画と1960年代邦画好き。

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