住棟を見学し、斬新で豊かな居住様式を見ることができた。使いにくそうに感じた空間もあったが、住み心地や暮らしやすさは間取りだけが左右するものではない。
周辺の環境に目を向けると、近くに大型の商業施設があり、団地の目の前にはコンビニやドラッグストアもある。町役場や町立図書館も近い。さらに交通の便もいいという。
「国道157号が通り、車の移動に便利です。以前は、岐阜市内に通じる名鉄揖斐線が走っていて、駅(北方千歳町駅)が近くにありました。鉄道は2005年に廃線になってしまいましたが、現在は岐阜駅や穂積駅へ出るバスが走っています」(宮崎さん)
ハイタウン北方周辺はバス停が複数あり、駅へのアクセスも充実している。住宅課課長の堀井隆司さんは、周辺環境や交通の便に加え、住棟内のエレベーターの存在も暮らしやすさにつながっていると語る。
「高齢化が進み、駅に近い団地の入居率が高くなる傾向にあります。また、公営住宅は階段室型の住棟が多く、エレベーターのある住棟は少ないため、1階や2階への希望が増える傾向も見られます。一方、高い階でも、エレベーターがあれば負担が少なく、住み続けられます」(堀井さん)
建設、建て替えの時代を経て維持・活用の時代へ
岐阜県には現在14の県営住宅がある。昭和30年代に建てられた住宅も残っており、改修や工事、修繕を重ねて、住み続けられている。
周期的に行う改修もあれば、突発的な修繕もあり、維持管理にかかわる予算は年度によって異なる。ちなみに2025年度は、修繕にかかわる委託料の予算額を約8億5000万円としている。
「ハイタウン北方」の今を知り、戦後、そして高度経済成長期の集合住宅建設の流れを思い出した。その後、一部の住宅は建て替えが行われ、現在は既存の住宅の維持管理も大きな役割を持つ。
岐阜県も同様で、公営住宅係の宮崎さんはこう語る。
「今ある住宅をどう活用するかを考え、維持管理をしています。公営住宅は時代によって役割が変化しています。社会のセーフティーネットであり、災害時の避難先としても活用されるようにもなりました。セーフティーネットであることは変わりませんが、福祉的な内容は時代とともにどんどん変わってきています」(宮崎さん)
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