「人生を選ばないことは、静かに自分を殺すこと」…哲学者が見抜いた"中年の危機"に陥る人の共通点

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そして気づくのです。「本当に行きたかった場所」には、たどり着いていないことに。これは空想ではありません。多くの人が実際に経験していることです。

自分で物事を選ばずに済ませてしまうことは、日常にたくさんあります。

「今日のランチ? なんでもいいよ」

「この部署は自分に合ってないけど、会社に言われたし、仕方ないか」

「親が安心するっていうから」

「友達もやってるし」

このように、日々の小さな場面で、私たちは特に深く考えることなく選択を手放します。それは、「自分の意思を手放す」ことでもあります。

「自分の意思を手放す」ことが習慣化すると、それはやがて人生全体にまで染み込んでいき、いつしか「自分が何を望んでいるか」がわからなくなってしまいます。

あえて厳しく言うなら、「選ばないこと」は、自分を失うこと、静かに自分を殺すことと同義なのです。

40〜50代を襲う「ミッドライフ・クライシス」

40〜50代ごろ、ふとした瞬間に「このままでいいのだろうか?」「自分の人生、本当にこれでよかったのか?」という問いが押し寄せてくることがあります。これが、「ミッドライフ・クライシス(中年の危機)」と呼ばれる現象です。

ミッドライフ・クライシスは、もともとは人生の中間地点で起きるアイデンティティや人生観の揺らぎを指す、心理学の概念です。人は中年期になると、死を現実的なものとして意識し始め、自分のこれまでの生き方や選択を見直すようになるのです。

実際、私がファシリテーターを務める「哲学カフェ」で出会ったある男性は、こんな告白をしてくれました。

「今休職中なのですが、40代半ばになって、自分が何をしたいのか、何に情熱を感じるのかがわからなくなりました。そもそも『自分らしさ』とは何なのか、まったく見当がつきません」

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