43年ぶりに復刻、世界で唯一の「原爆きり絵」絵本。著作権継承者が見つからず苦戦、手がかりは《YouTube》にあった

坂梨が入社する少し前の旧社(光人社)時代の出版物だが、長らく品切れとなっていた。復刊の機会を探っていたところ、2025年夏の「戦後80年」に合わせたラインナップに加えようと検討が始まった。
しかし1つだけ難題を抱えていた。著作権継承者の所在確認だ。実は、同社で把握していた初版刊行時の著者の電話番号はすでに使われていなかった。
著作権継承者を探す足掛かりとなったのが広島平和記念資料館だ。資料館には、寺尾の絵画が所蔵されているのがわかっていた。しかし、資料館に確認すると、2000年7月に寺尾が亡くなり、妻が著作権の継承者となったものの、翌年に資料館から送った調査票には回答がなかったという。

著作権継承者を探す作業はここでいったん途切れる。が、2024年10月に偶然、坂梨は『原爆ヒロシマ』の文章を朗読する映像がYouTube上で公開されているのを目にした。主催者などの詳細は不明だったが、エンドロールで「企画:ヒロシマを語り継ぐ会」と記されていた。
2024年夏、神戸で開催された「『原爆と人間』写真・絵画展」で同じYouTube動画が展示会場で上映された、との地方紙の記事も見つかった。主催は「神戸市原爆被害者の会」。代表者は、兵庫県原爆被害者団体協議会の理事長。これが有力な手がかりとなった。
ようやく復刊の運びへ
2024年12月、兵庫県被団協の理事長に『原爆ヒロシマ』の著作権継承者のことを問い合わせると、「映像作品は上映場所を提供しただけで、詳しく知らない」。
それでも、ヒントになるかもしれないと、企画者の一人である広島女学院高校OGを紹介してもらった。
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