「ラーメンの神様」に弟子入り《東池袋大勝軒の味を守る男》の凄さ―“自己流”の限界を突破するのに有効な“弟子入り”という学び方

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当時の北尾さんは長野県松本市に住んでいたことが田内川さんとの縁が深めた。山岸さんの味噌ラーメンの復刻に取り組んでいた田内川さんは長野県内で美味しい味噌ラーメンを探しており、北尾さんは案内役を買って出たのだ。

「狩猟の師匠が長野市で『八珍』というラーメン店をやっていて、味噌ラーメンが3種類もあって旨い。田内川くんを連れて行きたいと思った。結局、1日付き合って、最後は露天風呂に一緒に入った。裸の付き合いだね。熱いけれどさっぱりしている田内川くんはいいヤツだな、と思った」

この長野旅で田内川さんは山岸さんの出身地である山ノ内町も訪れ、なんと翌年の暮れに山ノ内町のある志賀高原のスキー場内にフランチャイズ店を出した。しかし、経験の浅い人に店を任せてしまい、半月も経たないうちに休業に追い込まれる。

「田内川くんはしばらくふさぎ込んでいたけれど、コロナ禍だった2020年の夏に電話があった。『トロさん、僕はこのままでは終われないです!』と。山ノ内大勝軒のことだとピンと来たね。

スキー場として有名なのに飲食店が少ない志賀高原は儲かるという経営者としての確信もあったと思うけど、それ以上に『このままでは山岸さんとその故郷に恥をかかせることになるのでリベンジしたい』という強い気持ちを感じた。いよいよ面白いヤツだと思ったね。ピンチのときにどう動くのかで人柄が見えるから」

コロナ禍でも繁盛

直営店として山ノ内大勝軒を再オープンさせた田内川さん。コロナ禍で都内の店が営業時間の短縮を余儀なくされたタイミングでもあり、スキー場にある山ノ内大勝軒の繁盛は救世主となった。

山ノ内大勝軒
志賀高原のスキー場内にある「山ノ内大勝軒」。120席もあるそうです。夏場は麓に場所を移して営業しています(写真提供:田内川さん)

「それでも全社的な経営状況はかなりきつかったらしい。田内川くんは『借金してでもリストラはしない』」という方針。効率優先の世の中で、人間関係を重視する昭和っぽいところがあるんだ」

昭和っぽいとは言ってもパワハラやセクハラとは無縁の経営者だ。自らは修業時代に理不尽なしごきを受けてきただけに、「自分は絶対にしない」と決めて独立したという田内川さん。

しかし、2022年の暮れに元従業員からパワハラなどの被害を受けたと訴えられてしまう。田内川さんは根拠のない訴えとして、示談ではなく裁判で受けて立った。とはいえ、店へのネガティブな影響は避けられない。

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