「なぜ企業が防災倉庫に出資?」、災害時の"共助"を支える「企業×テック」の新モデル「みんなの防災倉庫」《スマホで解錠》企業側のメリットとは?

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株式会社中電工(本店広島市、東証プライム市場上場)は、「みんなの防災倉庫」の協力企業の1つだ。同社は2021年度からICTを活用したソリューション事業に取り組んでおり、その一環としてAIを活用して水位状況を判定する「水位AI」を、2018年の西日本豪雨で被害を受けた自治体に提案してきた。

同社技術本部技術企画部の西米武・専任課長(情報通信ソリューション事業企画担当)は、「水位AIの活用により災害時に地域住民が危険な河川へ近づくリスクは減るが、被災後の支援までは行き届かない」と語る。そこで、「被災後の一助となればとの思いから『みんなの防災倉庫』に協力している」という。

みんなの防災倉庫普及協会の取り組みは、地域の防災意識を高める目的もある。防災倉庫の維持管理や、盗難対策のための監視、協力企業の募集拡大など、実際にその地域でなければできないことは多いという。

そうした中、協会は2024年12月にALSOK広島綜合警備保障株式会社と業務提携をした。

この提携により、防災倉庫の定期巡回が行われ、適切な維持管理が図られるほか、ALSOKグループの販路開拓を通じた普及拡大も期待できる。現在は中国地方が中心だが、全国展開に向け提携拡大も視野に入れているという。

目標は各都道府県で600社の協力企業

NHKは「南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域」に指定されている14都県の139の自治体を対象に、2月下旬から3月にかけてアンケート調査(回答率96%)を実施した。

結果によると、防災のための備蓄が進まない理由として(複数回答)、保管スペースの不足(94%)、予算の不足(72%)、食料などの維持・管理(63%)などが多かった。

宮地氏は、倉庫の設置場所が営業時間外に利用できない福祉施設内などの場合、広告目的の協力企業は必ずしも適していないという。

このため、申し込み段階で「防災が主目的である」ことを企業側に十分に理解してもらい、協会が効率的にマッチングをすることが課題だと指摘する。

また現在、防災倉庫を1基ずつ製造しているため割高感があるが、今後は量産化や製品改良に加え、サイズの種類改善などにより原価を下げていきたいと述べ、「そのためにも多くの企業の参加を募りたい」と強調する。

協会は今後10年程度のうちに、各都道府県で600社程度の協力企業を募ることを目標としている。国内で十分な実績を作り、運用ノウハウを蓄積した後は、海外展開も視野に入れていくという(宮地氏)。

災害時に減災につながる個人、事業者、自治組織、行政などあらゆる主体の連携が、協会が取り組む活動によって強化されるのか、今後の展開に注目が集まる。

伊藤 辰雄 ジャーナリスト

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いとう たつお / Tatsuo Ito

大学卒業後、ロイター通信社、ウォール・ストリート・ジャーナルなどで記者として、経済・金融政策、金融市場を中心に30年以上に渡り取材。現在は、フリーランス・ライターとして環境分野を中心に取材執筆するほか、会社四季報で食品関係の企業を担当。2024年3月上智大学大学院・地球環境学研究科修了(環境学修士)

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