「なぜ企業が防災倉庫に出資?」、災害時の"共助"を支える「企業×テック」の新モデル「みんなの防災倉庫」《スマホで解錠》企業側のメリットとは?

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多くの人は、最低2〜3日分の水や食料の備蓄も含め災害時の準備の必要性を感じつつも、さまざまな事情で実行できているわけではない。

人々の災害への「意識」と災害予防の「行動」の間にはギャップがあり、これを埋めていかないと、運が悪ければ、災害時に生死を分けることもある。

「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ」は報告書の中で、「行政による対応だけでは限界がある」と率直に認め、「命と社会を守るため」全ての主体が総力を挙げて臨むことを求めている。

災害発生後、復旧活動の開始や避難所が開設されるまでには一定のタイムラグが生じる。国や自治体がなんとかしてくれる、と思っている人もいるだろうが、被災直後の復旧や支援は期待できない。

身近な地域の自治組織の役割も「共助」として期待されるが、自治会自体も会員数の減少や高齢化といった課題に直面している。

「みんなの防災倉庫」とは?

そうした中、注目に値する取り組みを進めているのが、広島市で2024年3月に設立された「社団法人みんなの防災倉庫普及協会」(代表:益本秀則氏)だ。

「みんなの防災倉庫」は平時には施錠されているが、公式LINEアプリに登録しておけば、自治体が出す「警戒レベル5」相当の災害が発生した際、暗証番号が発行される。それを入力すれば、開錠され倉庫内の防災用品を誰でも無料で使うことができる、という仕組みだ。

みんなの防災倉庫の仕組み
災害時にスマートフォンを操作し、暗証番号を入手すれば誰でも防災倉庫を解錠できるようになる仕組み(画像:みんなの防災倉庫普及協会)

広い敷地は不要で、わずか1平方メートル程度の土地にも設置できるという。倉庫の中には給水タンクや簡易トイレなどの防災備蓄品が入っており、地域のニーズに応じて必要なものも任意で収納できる。

同協会は、みんなの防災倉庫を設置したい自治会、学校、福祉施設などと、その費用を負担したいと考える企業をマッチング。資金面で体力がある企業が継続的に関与することが特徴で、新しい形の「共助」モデルの確立と普及を目指しているのだ。

みんなの防災倉庫
広島県廿日市市の塩屋公園内に設置された「みんなの防災倉庫」。倉庫には、ブルーシート、玉ひも、簡易トイレ、緊急工具セット、給水タンクなどが備えられている。もみじ饅頭を製造販売する株式会社やまだ屋が費用負担(画像提供:みんなの防災倉庫普及協会)
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