アメリカによる「デジタル支配」から独立するべきだ…トランプ政権の決定次第で各国のデジタルバックボーンは瓦解しかねない

2025年2月11日、フランス・パリで開催されたAIアクション・サミットで写真に収まるエマニュエル・マクロン仏大統領（中央右）、ナレンドラ・モディ・インド首相（中央左）ら世界のリーダーたち（写真：ブルームバーグ）

2025年に入ってから、ドナルド・トランプ政権は、アメリカによる永続的な支援という、ヨーロッパに残された幻想に壊滅的な打撃を与えてきた。

パリで開催されたAIアクションサミットとミュンヘンで開かれた安全保障会議におけるJ.D.バンス副大統領の対決的な演説が基調を作り、アメリカのハイテク企業を規制しようとする諸外国の取り組みに報復するようなトランプ大統領の大統領令が続いた。

有識者による政治・経済コラムを翻訳掲載。週刊東洋経済掲載分だけでなく、多くの選りすぐりのコラムもタイムリーにお届けする。バックナンバーはこちら

そしてウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領との大統領執務室での対立を目の当たりにして、欧州の指導者たちはようやく「自分たちのことは自分たちでやれ」というメッセージを受け取った。

この”ショック療法”は、マリオ・ドラギ前イタリア首相が欧州議会で必死に訴えた「何とかしてくれ！」というメッセージをヨーロッパが聞き入れるために必要だったのかもしれない。

準戦時体制への備え

遅ればせながらではあるが、欧州連合（EU）には、行動を共にし、大胆な産業政策を実施する時間がまだ残されている。製造業の強みを生かし、強力な航空産業、産業機械、クリーンテック、造船、鉄鋼産業を再生することで、欧州は第二の "チャイナ・ショック "から身を守りつつ、準戦時体制に備えることができるだろう。

大きな圧力に応えて、ヨーロッパのデジタル部門も動員を始めている。これまでEUは、アプリやサービスの規制にほぼ専心してきた。しかし、これで欧州の産業が競争し、繁栄するための条件が整うわけではない。