鳴き声がかすれた12歳のオカメインコの死 原因は「老衰」ではなかった? ケージはこまめに掃除を。でも、除菌・消毒スプレーには要注意

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ケージはできれば毎日掃除をして、その際にはしっかりと換気を行いましょう。湿気が多いとカビが発生しやすくなりますが、乾燥しすぎていてもカビの胞子はよく飛びますので、適度な湿度を保つことが大切です。

餌の食べ残しやふんはカビの温床になるので、毎日きちんと取り除きましょう。「そのうちなくなるだろう」と、餌を入れっぱなしにしてはダメですよ。

また、除菌や消毒をうたったスプレー式・ミスト式の薬剤や、アルコールスプレーなどの使用は厳禁です。人間には無害なものでも、呼吸器が敏感な鳥では、それが致命的な影響を及ぼすことがよくあります。除菌や消毒をする場合は、熱湯を活用してください。

少しの異変に気づきましょう

鳥は体が小さい種が多く、病気の診断が難しい動物です。さらに、本能的に体調の異変を隠すため、飼い主さんが違和感を覚えたときには、すでに病気がかなり進行していることも少なくありません。

そのため、健康なうちから定期的に動物病院を受診し、できるだけ早期に病気を発見することが大切です。

家庭でできることとして、日頃のスキンシップの際に卓上スケールなどで体重を測る習慣をつけると、わずかな異変にも気づきやすくなるため、おすすめです。

アスペルギルス症のケース(1つめの事例)では、早期に発見できていれば、抗真菌薬の吸入治療が可能だった可能性があります。

一方、胃がんのケースでは、現在の技術では小さなセキセイインコに対して、人間のような内視鏡検査を行うことはできません。レントゲン検査で胃がんを疑うことはできますが、残念ながら生前に胃がんを確実に診断するのはほぼ不可能です。

何より仮に診断できたとしても、外科手術は困難で、効果的な抗がん剤もきちんと調べられていないため、根本的な治療ができないのが現状です。

筆者ら研究者は、つらい思いをする動物をできるだけ減らすべく、日々、病気の発生メカニズムや治療法の研究を進めています。

飼い主さんたちもぜひ、ペットが病気にならないよう適切な飼育環境を整えること、飼育ケージを清潔に保つこと、そして異変に気づいたら早めに獣医師の診断を受けることを心がけていただければと思います。

健康なときから動物病院に連れていって健康な状態を知ってもらうことで、獣医師も病気の診断や治療をスムーズに進めることができます。そうした日々の積み重ねが、大切な家族の一員とより長く一緒に過ごすための、最善の行動となるのです。

中村 進一 獣医師、獣医病理学専門家

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なかむらしんいち / Shinichi Nakamura

1982年生まれ。大阪府出身。岡山理科大学獣医学部獣医学科講師。獣医師、博士(獣医学)、獣医病理学専門家、毒性病理学専門家。麻布大学獣医学部卒業、同大学院博士課程修了。京都市役所、株式会社栄養・病理学研究所を経て、2022年4月より現職。イカやヒトデからアフリカゾウまで、依頼があればどんな動物でも病理解剖、病理診断している。著書に『獣医病理学者が語る 動物のからだと病気』(緑書房,2022)。

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大谷 智通 サイエンスライター、書籍編集者

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おおたに ともみち / Tomomichi Ohtani

1982年生まれ。兵庫県出身。東京大学農学部卒業。同大学院農学生命科学研究科水圏生物科学専攻修士課程修了。同博士課程中退。出版社勤務を経て2015年2月にスタジオ大四畳半を設立し、現在に至る。農学・生命科学・理科教育・食などの分野の難解な事柄をわかりやすく伝えるサイエンスライターとして活動。主に書籍の企画・執筆・編集を行っている。著書に『増補版寄生蟲図鑑 ふしぎな世界の住人たち』(講談社)、『眠れなくなるほどキモい生き物』(集英社インターナショナル)、『ウシのげっぷを退治しろ』(旬報社)など。

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