「人手不足」と言われるけれど、欲しい年齢層が採れていないだけでは?「賃金・物価が上がるから」と日銀が利上げすればリスクを高めかねない

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しかし、年齢別(34歳以下、35〜44歳、45〜54歳、55歳以上)のミスマッチ指標は上昇傾向にあり、特にコロナ後に上昇幅が大きくなっていることも分かった。

なお、年齢別の求人数は全国ベースでは公表が行われていないため、今回は東京労働局が公表している関東市場圏(東京、埼玉、千葉、神奈川、茨城、山梨)のデータを用いた。全国のデータとは多少異なる可能性はあるが、有効求人倍率の推移は関東市場圏と全国が同じような動きになっており、傾向は同じだろう。

年齢別のミスマッチの拡大は、年齢別の有効求人倍率の推移をみれば明らかである。

特に「即戦力」で「比較的若い」という特徴がありそうな「35〜44歳」の有効求人倍率は2019年のピークを上回っている。「55歳以上」や「60歳以上」の有効求人倍率が大きく低下したままであることと対照的であり、年齢別のミスマッチが最近の人手不足感の高まりに寄与している可能性が高い。

以上の考察より、最近の人手不足感の高まりは年齢別のミスマッチによるものである可能性が高いと言える。

「人手不足」感の陰に何があるか

ここで、疑問の発端であった日銀短観の雇用人員判断DIが有効求人倍率と乖離している問題について、改めて考えてみたい。

まず、両者の乖離の変化を示すため、雇用人員判断DIの推移を有効求人倍率で説明する回帰モデルを作成し、残差を求めた。この残差は、雇用人員判断DI(≒人手不足感)のうち、有効求人倍率の変化(≒マクロ的な人手不足の程度)では説明できない部分であり、ミスマッチに由来するものだと考えることができる。

次に、この残差と先ほど作成した年齢別のミスマッチ指標を重ねると、両者には一定の連動性がありそうにみえる結果となった。

さらに調査を進めてみる必要はあると考えられるが、人手不足感の高まりにとって年齢別のミスマッチという問題は重要なファクターになっている可能性は高いだろう。

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