「なんとしても狂歌本でヒットを生み出したい…」大河主人公・蔦屋重三郎が打って出た"賭け"

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ちなみに「青楼」とは、高貴な人や美女が住む家のことを指しますが、江戸時代においては「吉原遊廓」のことを言いました。

春信の生涯は謎に包まれているところもあり、生年は不明確です。絵は、京都の浮世絵師・西川祐信に学んだと言われます。祐信は、美人画を描き、上方浮世絵を代表する画家と評されています。

春信は、宝暦10年(1760)に画家デビューしたとされ、以後、10年間ほど活動。師匠と同じく、美人風俗画の人気絵師となりました。

遊女や市井の美女を描いた鈴木春信

代表作には「座敷八景」「雪中相合傘」などがあります。春信は、遊女のみならず、市井の美女も描きました。

有名どころで言うと「鍵屋」(水茶屋)の娘・お仙です。水茶屋とは、道端や寺社の境内などで、茶などを飲ませて休息させた店のこと。谷中笠森稲荷境内にある「鍵屋」の娘・お仙は人気で、彼女を見るために鍵屋に行く人が出たほどです。そんな町の看板娘を描いたのが、春信の「お仙の茶屋」(1765年頃か)でした。

この錦絵のお仙、確かにスラリとした美人と言えるのではないでしょうか。

大河ドラマ べらぼう 蔦屋重三郎 鈴木春信
鈴木春信ゆかりの東京の谷中にある大円寺(写真: まりも / PIXTA)

春信には、ほかにも「夕立」「鶴上の遊女」などの作品があります。前者は、雨雲に気が付いて、急いで洗濯物を取り込もうとする女性が描かれています。しかし、慌てすぎて、片方の下駄が脱げています。そこに吹く突風。洗濯物や、女性が着る着物もはためいています。日常の何気ない一コマを、躍動感溢れる筆致で描いていると言えるでしょう。

私は、この絵を見て、マリリン・モンロー(1926〜1962)が地下鉄の通気口に立ち、白いスカートがふわりと浮き上がるシーン(映画『七年目の浮気』1955年)をなぜか思い出しました。

さて、話をもとに戻します。過去に春信の『絵本青楼美人合』という出版物があったので、重三郎の「狂歌絵本」も、松木寛氏(元東京都美術館学芸員)が指摘されるように「焼き直し」(同氏『蔦屋重三郎』講談社、2002年)と言えるのかもしれません。

ですが、たとえ、似たような企画であっても、画家やスタイルは異なる(俳諧→狂歌)のですから、そこからはまた新たな文化が生まれてくることでしょう。

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