ところがトランプさんから見れば、そんな小賢しい集団は「ディープステーツ」の一味ということになる。アメリカという国は、定期的に反知性主義が支配的になる歴史を繰り返してきた。たぶんこの後しばらくは、そういう時期が続くのであろう。ワシントンのシンクタンクにとっては、受難の季節が続くことになる。
「反知性主義政権」下でも、アメリカとつきあう必要
せっかくの知的アセットが「荒れ放題」になってしまうのは、まことにもってもったいない。が、トランプ氏やその周囲の「MAGA派」は言うだろう。「そんなやつらに任せておいたから、この国はこんな酷いことになったんじゃないか。エリートどもは退場しろ。これからは俺たちの出番だ」
いや、それはそうなのだ。この政権が発足したのは民主主義の結果なのだから、文句を言っても始まらない。そしてトランプさんは、自分を選んでくれた「忘れられた人々」のために働く覚悟のようだ。ただし「忘れられた人々」の生活向上を図るというよりも、彼らの復讐心を満足させることに主眼があるように見えてしまうのだが。
そしてトランプ親分は、政権発足からまだ2カ月もたたないというのに、ウクライナ戦争の調停工作から関税戦争まで縦横無尽のご活躍である。が、どう見てもうまく行きそうには思えない。当欄の前回コラム「『この世が終わった』のを知らないのは日本だけだ」(3月8日配信)の中で、慶應義塾大学大学院の小幡績先生は「この世が終わった」と表現している 。
筆者も現状認識はほとんど一緒だが、「この世の終わり」とは捉えたくない。だって人生は続くし、明日になればまた日は昇るし、夜になったら腹が減る。「反知性主義政権」の下でも、われわれは生きていかねばならないし、経済活動を続けなければならないのだ。
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