「何もしないほうが得」消極的な日本人が増える背景 "自ら行動しない態度"が広がっている

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この調査から20年以上たった2016年、人的資源管理論などを専攻する経営学者の松山一紀は、同様の項目を用いて全国の「上司がいる部下」1000人にウェブで調査を行った。

すると「この会社でずっと働きたい」という回答は25.4%と世界青年意識調査の結果と大差ないが、「変わりたいと思うことはあるが、このまま続けることになるだろう」という回答は40.5%と大幅に増えている(松山一紀『次世代型組織へのフォロワーシップ論――リーダーシップ主義からの脱却』ミネルヴァ書房、2018年、104〜105頁)。

消極的な帰属意識が高まる

対象となる年齢層が異なるので単純な比較はできないが、消極的な帰属意識は以前よりいっそう強くなっている可能性がある。

それを裏づけるような会計学者澤邉紀生の指摘は興味深い。

日本企業の特徴は、予算目標をめぐって、トップとミドルの間でキャッチボールのようにやりとりが繰り返されてきたことにあった。トップは本社の考え方を理解してもらおうとして、ミドルは現場の現実にたって、お互いに理想と現実をぶつけあって粘り強く話し合う、これがキャッチボールの中身である。
ここまで時間と労力をかけてキャッチボールを続けてきた背景には、現場を重視してきた日本企業の思想ともいうべき考え方が合(ママ)った。
(澤邉紀生「会計と凡庸なる悪」『日本情報経営学会誌』第40巻第1・2号、2020年)

ところが2014年5月に行われた、城西国際大学の櫻井通晴客員教授と東芝財務部の松永靖弘企画担当グループ長との対談で、松永氏はトップとミドルとの間の「キャッチボール」が減ったことを認め、90年代ころまでは1次、2次、3次とやっていたが、いまは1回で終わらせており、だんだんプロセスを簡素化していると証言している(『企業会計』第66巻第8号、2014年)。

東芝の不正会計が発覚する前の年の発言だけに、下からの主張が影をひそめ、一方的な上下関係に変化した組織が不正の温床になった可能性がうかがえる。対談のなかで櫻井教授も述べているように、キャッチボールが減ったのは東芝にかぎったことではなく、日本企業の一般的な傾向だといえよう。

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