「高校無償化で公立淘汰」起きてしかるべき理由 前原誠司「統廃合は不可避、質的競争を促す」
――もう1つよくある指摘が、最近増えている中高一貫校についてです。そういった学校は仮に無償化されても高校から入ることができないので、教育の機会を増やすことにつながらないですよね。
まず1つ言えるのは、中学校までは義務教育です。その立て付けの中で公立が義務教育の役割を果たし、私学はそれに対してプラスアルファのチャレンジをしているわけです。公立の中でしっかりサービスを提供できる前提があるため、(私立を含めた)無償化はいかがなものかと。
一方で高校は義務教育ではなく、でも99%の子どもは通っている。その点が中学校とは異なります。
私は、高校無償化の次は大学無償化を実現したいと思っています。いちばん大事なのはここです。なぜなら、親の年間所得が1000万円以上の家で、18歳のお子さんの大学進学率はおよそ62%。対して所得が400万円以下の場合、同28%になります。
もちろん、専門学校や高校を卒業して社会で活躍されている人はたくさんいますし、みんなが大学に行かなければならないとも思いません。が、親の所得によって大学進学率が変わること、そして大学に進学した子どものほうが生涯収入が平均で7000万円以上高いことは見逃せません。
親の所得格差が子の教育機会格差、ひいては所得格差につながっているという、格差の固定化が起こっていると。なので教育については、結果は不平等でもいいけど、機会は平等に与えられる環境にしていきたい。そうすると高等教育まで無償化するというのは当たり前の道筋なんですね。
ただこれと同時に、私は大学の質的改革が必須だと思っています。
「Fラン」大学は間違いなく淘汰される
――逆に無償化することで、質の悪い大学にも生き残りのすべを与えてしまうことにはなりませんか?
それはないです。高校と同じで、競争が激しくなりますから。いわゆる「Fラン」とされるような大学は間違いなく淘汰されていきます。
無償化と併せて必要だと思う「質的改革」が2つあります。1つは、バイト三昧などで授業に出ない子、学ばない子は無償化の対象にしないこと。これは納税者の理解を得られないからです。なので入学の門戸は広く、一方で卒業を難しくする必要があります。
2つ目は、大学の経営や在り方そのものです。日本の大学は海外から見ると相当遅れています。単純な良し悪しではないですが、例えばハーバード大学と東京大学を比べると、いくつも違う点がある。
ハーバード大学は何に最も力を注いでいるかというと、スタートアップ創出。1990年代から30年間あまりで約4000社をつくっています。その中からユニコーン企業(創業10年以内で評価額10億ドル以上の未上場企業)は70~80ほど生まれています。
そしてハーバード大学卒のスタートアップ成功者などが、大学に寄付をする。それによってつくられた基金が今、5兆円くらいあるんですね。しかも大学はそれを運用している。現在の学長は学者出身ではなく運用のプロで、平均利回り11%で運用しています。
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