まるでドーミーイン?「中国のホテル」の凄い進化 おもてなしも凄い、現地のホテル事情を分析
ATOURは2013年に創業。初期は「本と撮影」をテーマにしたコンセプトホテルとしてブランディングを行い、有名人や有名企業とコラボ展開しつつ、SNSを利用する若者を中心にファンを広げていった。

知名度が高まったのは2020年以降。コロナ禍でホテル業界が総崩れの中でも業績が堅調だったため、メディアに取り上げられるようになった。
2024年9月末時点で、ATOURは1533軒を展開する。うち98.1%がフランチャイジーだ。ATOURによると、2022年のホテル会員の年齢構成は40歳以下が72%、30歳以下が28%。「若者に人気の、競合が少ないホテルチェーン」との評判がフランチャイジーを呼び込み、出張にもレジャーにも使える「ライフスタイルホテル」の市場を消費者に認知させた。
ECで寝具や雑貨も販売する
ATOURは売り上げの4分の1を小売り事業が占めているという点でもユニークだ。ECで寝具、雑貨を販売し、特に枕がヒットしている。
ホテルにも商品が展示され、眺めていたら必ずスタッフがやってきて、営業を始める。雑貨から始まり住宅やホテルを手掛けるようになった無印良品の逆パターンなのだ。


2024年7~9月期の売上高は前年同期比46.71%増の18億9900万元。純利益は同47.27%増の3億8400万元。中国の6大ビジネスホテルチェーンの中で増収は3社、増益は2社にとどまる。増収増益だったもう1社の君亭酒店は売上高がATOURの10分の1以下で、売上高は同7.2%増、純利益が同19%増だった。ATOURの成長の勢いがよく分かる。
ホテルの増えすぎに懸念
ATOURに限らず、中国のホテルの大進化は一利用者として素直にうれしい。しかし消費の先行きが不透明な中国では、ATOURの将来を不安視する声も少なくない。
この2年ほど、中国人と話すと必ずと言っていいほど「巻(juan)」という言葉が出てくる。「内向きの過当競争」という意味で、どの業界でも採算性や需要を無視した過剰生産、過剰出店が加速している。ホテル業界も例外でない。
ATOURの直近のホテル数は1533軒だが、2024年7~9月だけで140軒を新規開業した。上場直前の2022年9月末の施設数は880だったので、2年で約650軒増えている。ほかの大手チェーンも規模拡大にまい進し、業界トップの華住は2024年の新規出店目標を2200軒としていた。
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