外国人女性と交際も「逃げた日本人500名」の行方 フィリピン人母子は「パパに会いたい」と探している
依頼を受けた女性以外にも、ダバオ市には同じような問題を抱え、困っている女性たちが多くいた。共通していたのは、日本に出稼ぎに来て働く中、日本人男性と交際し、フィリピンに帰国してから出産したということだった。
フィリピン人女性だけでなく、日本人同士であっても、認知をしなかったり、養育費を払わない父親はいる。
「ですから、国際的な問題というよりも、通常、私たちが依頼を受けている事件の延長という感覚でした。
話してみてわかったのは、経済的な問題もありますが、子どもたち自身に、『お父さんに会いたい』という気持ちがすごく強いということでした。自分のアイデンティティを認めてほしいという気持ちです」
杉山弁護士が最初の一人に手を差し伸べたことによってフィリピンで口コミが広がり、杉山弁護士のもとに相談が寄せられるようになっていった。今では、杉山弁護士一人で対応できないため、数人の仲間の弁護士とともに相談を受けている。
相談から実際に依頼を受けるところまでに至ったケースは、これまでに200件ほどという。かなりの数に思えるがそれでも問題の一部に過ぎないという。
「正確に調査されたものではありませんが、フィリピンには認知されていない日本人の子どもが3万〜5万人くらいいると言われています。現在、日弁連がフィリピンに弁護士を派遣して、現状の調査などに取り組んでいますね」
それでも、杉山弁護士のように2〜3カ月に1度は現地に飛び、依頼を受けている弁護士は他にいない。
認知や養育費求められた父親たちの「逆ギレ」
実際に、父親である日本人男性を見つけることはできるのだろうか。
「大体、7割くらいはなんとか見つけることができます。交際期間中に知った電話番号から照会したりします。
それから、フィリピンはキリスト教が根付いていますので、赤ちゃんの時に洗礼を受けます。子どもが小さいうちは、まだ父親との関係が良好で、フィリピンまで来て洗礼式に立ち会うケースがあり、そうした場合は教会に父親の資料が残されていて調べることができます」
ただし、フィリピンの母子を放置してきた父親のうち、認知するように弁護士から連絡がきてすんなり応じるのは半分ほどだ。3割くらいは、おそらく「迷惑だ」という感覚から裁判所から認知や養育費についての調停に出るよう要請があっても無視をするという。
「放置していたという後ろめたさもあって、『申し訳なかった』と対応する人もいますし、逆ギレしてくる人もいますケースバイケースですね」
なぜ日本人男性はフィリピンの母子を放置するのか。
「よくあるのは既婚者で、すでに日本で妻子を持っているパターンです。あとは、東南アジアの人たちを軽んじるような差別意識を持っている人もいるのだと思います。相手が日本人女性であればしないようなことを、フィリピン人女性にはしています。
また、父親が高齢となっているケースも多いです。歳の離れた若いフィリピン人女性と交際したものの、今は年金生活者になっていて、なかなか養育費を回収できないこともあります。認知症で高齢者施設に入ってしまっている父親もいます」