外国人女性と交際も「逃げた日本人500名」の行方 フィリピン人母子は「パパに会いたい」と探している

認知や養育費の問題「フィリピンに限った話ではない」
この問題が深刻化した理由には、フィリピンの文化的背景もあるという。
「フィリピン側の事情としては、カトリックの人が多く宗教上の理由から避妊や中絶に対して忌避感情があります。
ですので、日本に滞在中、日本人男性と交際すれば妊娠にいたる女性が多くなってしまうのです。しかし、先ほど述べたように相手が既婚者だったりして結婚には至らず、そのうちビザが切れてフィリピンに帰国せざるを得ません。
子どもが生まれれば、日本の興行主も以前のように日本へ呼んでくれなくなります。最初は父親もフィリピンに通ってきますが、お金もかかりますし、やがて疎遠になってぷっつり連絡が取れなくなるのです」
現在、「興行ビザ」の発行が厳格化され、出稼ぎのために日本へ渡るフィリピン人女性は減っている。フィリピンの経済も発展し、必ずしも今はフィリピンの方が貧困にあるとも言えなくなってきている。
しかし、日本人男性がフィリピンを訪れ、女性と交際して子どもが生まれるケースも後を絶たない。今もなお、続いている問題なのだ。
どうしたら、認知したり、養育費を支払ってもらえるようになるのか。
「これは、フィリピン人母子に限った話ではないですね。
私の方では、調停などで養育費が決まった後も、月々の養育費の回収とフィリピンへの送金をおこない、支払いが遅れれば、すぐに相手方に対応するようにしています。
永遠の課題ではないでしょうか。一部の自治体がおこなっているように養育費は行政が立て替えてくれればいいのにと思います」
杉山弁護士は、そうした日本人男性に父親としての役割を果たすよう求めるため、全国の裁判所に足を運び、手続きを進めてきた。
「北海道と沖縄以外の都道府県内の裁判所に行きましたね」と笑う。
「私自身の感覚では、人権意識からというよりも、仕事として興味をもってやってる。フィリピンには依頼をしたい人、日本の弁護士の支援を必要としている人がたくさんいるから、それを引き受けているという感覚です。経済的なメリットはあまりないですけれど」
そう話す杉山弁護士だが、その「仕事」によって、多くのフィリピン人を母親に持つ子どもたちが得られるべき権利を手にすることができていることは間違いない。杉山弁護士の多忙な日々は続いている。
アザレア法律事務所代表。鳥取県出身、一橋大学法学部卒業。1999年、弁護士登録(鳥取県弁護士会)。日弁連理事、鳥取県弁護士会会長などを歴任。剣道は教士七段の腕前。
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