被災地のシャッター通りで起業、高1と母の心意気 岩手県釜石市 スモールビジネスでにぎわいを

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ちょうどそのころ、この仲見世のレトロなたたずまいに惹かれた移住者が地域団体「釜石大観音仲見世リノベーションプロジェクト」を立ち上げ、地域おこし協力隊がカフェやゲストハウスを開業した。

しかし、コロナ禍でほとんどが閉店。残ったのは、プロジェクト代表で一級建築士の宮崎達也さんがオーナーを務めるシェアオフィスのみとなっていた。

学校の勉強と店長の“二刀流”で奮闘

そんな「シャッター通り」の仲見世に2025年1月に新規オープンしたのが、古着屋「たすいち屋」とレンタルスペース「crush on」だ。

この店の店主は、釜石在住の高校1年生・小笠原皐さんと母親の梓さん。開業準備のためにクラウドファンディングに挑戦し、目標の150万円を調達。高校生による起業とあって注目を集め、岩手の新聞やテレビの取材や地方創生をテーマとしたイベントに引っ張りだこになった。

クラウドファンディングの様子
クラウドファンディングに挑戦し、目標金額を調達(画像:CAMPFIREでのプロジェクトページ)

店の営業は金曜から月曜までの週4日。岩手県内の私立一関学院高校の通信制で学ぶ皐さんは、学校から出される大量の課題や試験勉強をこなす高校生生活と店長の“二刀流”だ。試験が近づくと、接客の合間に店でも勉強に励み、試験の日は皐さんが店に戻るまで「母店長」梓さんが店に立つ。

店舗の左半分が古着店で、右半分はダンスなどの練習ができる一面鏡張りのレンタルスペース。この物件はかつては土産物店で、2005年ごろから空き店舗となっていたが、宮崎さんがこの物件を購入し、小笠原さん親子がテナントとして入居する形で、店のオープンにこぎつけた。

小笠原さん親子
仕入れた商品のコーディネートを考える小笠原さん親子(写真:筆者撮影)

土産物店時代の在庫や器具が残されていた店内を友人らの力を借りて片付け、家族総出でDIY。壁を塗り替え、もともとあったショーケースをアクセサリーのディスプレイに使ったり、フィッティングルームの壁には古着のTシャツを幾重にも貼り合わせたり……。随所に2人のセンスが生かされた空間が完成した。

店内の様子
リノベーションする前の土産物屋に置かれていた招き猫などのアイテムも活用した店内(写真:筆者撮影)

震災後、物心ついたときから、宮崎さんと家族ぐるみのつきあいがあったという皐さんは、これまでも仲見世で開催されたマルシェにブースを出したり、イベントを手伝ったりと仲見世とかかわってきた。

小笠原皐さん
物心ついたころから多様な大人たちとかかわってきたと振り返る小笠原皐さん(写真:筆者撮影)
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