富士フイルム、5万円超の高級「チェキ」発売の勝算 デジタル全盛期にあえてアナログの"逆張り"

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世界的にチェキの需要が高まる中、一時はフィルムの品薄状態が続いた。以前から生産能力を高めていたが、それでも供給が追い付かない。2023年には神奈川県の生産拠点に約45億円を投じ、新たな生産ラインを増設すると発表。2025年度に生産能力を約2割向上させる方針だ。現状、フィルムは日本国内でのみ生産されているが、今後の需要次第では海外生産も検討するという。

9割が海外向けのグローバル商品

2009年頃から海外展開を本格化させたチェキは、世界100カ国以上で展開しており、現在では販売台数の約9割を海外向けが占める。主力は欧米だが、中国やインドなどの新興国にも広がりをみせる。

販売チャネルも従来のカメラ専門店から書店やアパレルショップなどにも広げ、より多くの層にアプローチできる体制を整えた。日本では「check it」から生まれた愛称「チェキ」で親しまれているが、海外では「instax(インスタックス)」という商品名が広く浸透している。

富士フイルムでイメージングソリューション事業部統括マネージャーを務める高井隆一郎氏(記者撮影)

マーケティングで特に重視しているのは世界各地で行うユーザー調査だ。インタビューやSNSの分析を通じ、よい評判や悪い評判も徹底的に収集する。また、商品企画時には製品ごとにペルソナの人物を設定し、ユーザーの名前や年齢、家族構成まで想定するほどの徹底ぶりだ。

高井氏は「なぜユーザーがチェキを使うのか」を探り続ける中で、多くのユーザーは写真をチェキでプリントして手にすることに価値を感じていると発見したという。しかも、このユーザーの声は世界中でほぼ共通していた。

「特にユーザーの声で印象的だったのは、プリントした瞬間に『推しに触れられる』『推しとの距離が縮まる』という表現でした」(高井氏)

友達や家族、ペットなどの写真も、実際にプリントして所有することで、その存在をより近くに感じることができる。それが 「触れる」という言葉に集約されている。フィルムの手触りや、その場で写真が現れる瞬間のワクワク感も、チェキにしかない魅力だ。

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