富士フイルム、5万円超の高級「チェキ」発売の勝算 デジタル全盛期にあえてアナログの"逆張り"

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この発見をもとに、富士フイルムは『とるだけじゃない、あげたいから。(don't just take, give.)』というタグラインを世界共通で展開。以前は各国の現地法人ごとにバラバラだったが、2019年以降は商品企画やプロモーションなども、全世界で統一するようになった。

長年培ったフィルム技術が強み

チェキの品質を支えるのは、富士フイルムが長年培ってきた銀塩写真技術だ。フィルムは厚さ数十マイクロメートルの中に感光層を含む18層の構造を持ち、光に反応して異なる色の層が重なり合うことで鮮やかな写真が生み出される。これは、写真フィルムの製造を祖業として90年以上続く富士フイルムの技術である。他社には簡単に模倣できるものではなく、高い参入障壁となることで、チェキのブランド価値を支えている。

「数十秒じっと待つと、フィルムに画像がふわっと浮かび上がってくる。この瞬間が非常に情緒的な時間であり、チェキの本質的な価値はまさにフィルムにあると確信しました」(高井氏)

専用のフィルムは3種類のサイズを展開、カラーバリエーションも豊富だ(記者撮影)

専用のフィルムはカラーバリエーションも豊富だ。サイズは定番のカードサイズに加えて、幅2倍のワイド、正方形のスクエアの3種類を揃える。10枚入りのフィルムを1000円前後で販売しており、本体購入後にフィルムの買い替えによる安定した収益が見込める。

デジタル全盛の時代にあっても、アナログの魅力が再び脚光を浴びることは珍しくない。しかし、高井氏は「チェキはもはやブームではない、文化だ」と断言する。その言葉通り、チェキは単なる流行ではなく、写真を楽しむ文化としての地位を確立しつつある。

緻密な商品作りやブランディングを駆使し、スマホとは競合しない「アナログならではの価値」を追求する。それが富士フイルムがチェキに込める想いなのだ。

山下 美沙 東洋経済 記者

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やました みさ / Misa Yamashita

精密・ロボット業界を担当。山梨県韮崎市出身。神戸大学経済学部を卒業。2024年、東洋経済新報社入社。スマート農業、工作機械にも関心。最近は都内の立ち食いそば店を開拓中。

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