「地方がどんどん壊される」本当の"原因"は何か 木下斉vs永谷亜矢子対談【前編】

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永谷一見、活況に見えても、実際は企業が儲かっているだけで、「その地域にはほとんどお金が落ちていない」なんてよくある話ですよね。

美しい景観にこそ価値があるのに、ビジネスホテルが乱立して台無しになってしまうとか。ある町屋が中国人に安く買い叩かれて壊されてしまったり。

魅力ある観光資源がどんどん「壊されていく様」に、私は強い危機感を持っています。

木下:今、トランプ政権が関税による外国企業の締め出しを行って賛否両論が巻き起こっていますが、是非はともかく、「自国資本による事業を守るための手段」として理解はできます。一方、日本はその逆で、海外資本に対して無防備なほど開放をしています。

なぜそんなことをするかというと、目先の経済的には伸びるからですね。ニセコだって、沖縄だって、その他のインバウンド客が押し寄せる地域だって、東京資本や海外資本が入ったことで、潜在的だった魅力が開発され、成長した側面があります。

一方で内実を見れば、観光客からの稼ぎについては外資が施設を投資し、外資がホテルを運営し、働く人も海外から……となると、「日本国内での経済活動ではあるためGDPなどには反映されるプラス効果はあるものの、結果として地元に残る資金は限られる」ということも少なくありません。

適切な東京資本や外資誘導によって地域の価値を再評価することも一定程度必要であるものの、やはり「地元資本による開発」もまた大切なのです。

地元資本企業は儲けが出れば、地元に再投資をする。一方で外資は世界のポートフォリオの中で別の発展地域に資本を移動させて再投資をする。だから地元資本による投資はとても大切なのです。

50年、100年単位で「地域が地域らしく残るか」

木下:実際に今、ニセコでも地元の方々が独自のサービスでも奮闘していますし、沖縄でも地元企業が新たな切り口での観光産業を伸ばそうとする挑戦も始まっています。たんに「有名な外資ホテルがどんどん建てばよくなる」「インバウンド客が来るだけでよくなる」というような単純な話だけではないのですよね。

永谷:だけど、すでに大口の資本が参入した地域では、「固定資産税がたくさん入ってきてラッキー」などと思ってしまっているわけです。そうして、主要駅から直結でホテルに行くだけの「何の面白みもない町」ができあがっていく。

確かに今はいいかもしれません。しかし50年、100年単位で見たときに果たして「地域が地域らしく残っている」のでしょうか

地域の将来も担っているんだということを、肝に銘じておいてほしいと思っています。

*この記事の続き:「日本は観光で復活する」"補助金"より大事な施策

木下 斉 まちビジネス事業家

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きのした ひとし / Hitoshi Kinoshita

1982年生まれ。高校在学時からまちづくり事業に取り組み、2000年に全国商店街による共同出資会社を設立、同年「IT革命」で新語流行語大賞を受賞。

早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。

2008年に設立した熊本城東マネジメント株式会社をはじめ全国各地のまちづくり会社役員を兼務し、2009年には全国各地の事業型まちづくり組織の連携と政策提言を行うために一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立。2015年から都市経営プロフェッショナルスクールを設立し、既に550名を超える卒業生を輩出。2020年には北海道の新時代に向けた「えぞ財団」を仲間と共に発足している。また内閣府地域活性化伝道師等の政府アドバイザーも務める。

著書に『まちづくり幻想』『稼ぐまちが地方を変える』『凡人のための地域再生入門』『地方創生大全』等多数。

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永谷 亜矢子 立教大学客員教授 株式会社an代表取締役

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ながや あやこ / Ayako Nagaya

大学を卒業後、リクルートに入社し広告営業、企画、雑誌の編集に携わる。2005年、東京ガールズコレクションを立ち上げ、イベントプ ロデュースやPR、社長業を兼任。2011年より吉本興業で海外事業、総合エンターテイメントのトータルプロデュースを担い、2016年に株式会社anを設立。企業&中央官庁、自治体へのマーケティング、PRコンサルタント、施設やイベントからメディアまでの様々なプロデュース業を担う。2018年より立教大学経営学部客員教授。2019 年よりナイトタイムエコノミー推進協議会の理事に着任。以降、観光庁、文化庁など有識者やアドバイザー、現在も富山県、富士吉田市はじめ8自治の地域創生事業にハンズオンで長期的に携わっている。

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