米やトマト生産につながる「宇宙ビジネス」の実態 農業のほか漁業でも進む「衛星データ」の利活用
もともと、ポルトガルという日本から離れた土地のトマト栽培において、農家によってその収量に差が出てしまう課題があったそう。そこで、ベテラン農家がどのような行動をしているかを、衛星データと合わせて把握した営農システムを開発しました。
その結果、新米農家であっても、一定の収量を出せるようになり、検証事業では、平均よりも30%多い収量を確保でき、肥料の投入量も20%減らすことができたことで、コスト削減にもつながる結果となったそうです。
漁業でも衛星データを利活用
一次産業における技術継承に衛星データが活用されている事例は、農業だけではありません。漁業においても技術継承のために衛星データ利活用が進んでいます。
過去の天気、漁獲量、漁場が記された漁業日誌と過去の衛星データをかけ合わせることによって、その日の状況をもとに、どこに行けば、必要な漁獲量を満たせるかを推測できるサービスが、すでにいくつか存在しています。
漁業においては、ベテランの漁師の勘と経験がまだまだ活きているというお話も取材でいただきましたが、新米の漁師にとっては、ベテラン漁師の思考を理解するための参考データとしても活用されているようです。
このように、衛星データを利用することによって、肥料や燃料費の抑制によるコスト削減、生産量の向上、品質の向上につながり、ベテラン農家やベテラン漁師からの技術継承の支援にもつながっている事例が生まれています。
特に、日本のように少子高齢化が加速し、一次産業に従事する農家や漁師の方が減り続けている今、衛星データのように広範囲の状況を一度に把握し、効率的な営農支援や漁業支援を行えるツールの需要は今後も拡大していくでしょう。
カゴメのように自社で圃場を持っていない食品関係企業でも、衛星データを活用する事例が生まれ始めています。その一例が、日清食品ホールディングス(HD)です。
日清食品HDは、カップヌードルや日清焼そばU.F.O.といった、即席めんの製造と販売を行っており、即席めん業界では売上第1位の会社です。
日清食品では、即席めんを製造する際に、一度めんを油で揚げる工程があり、そこで利用しているのはパーム油です。パーム油のもととなるアブラヤシは、主にインドネシアやマレーシアといった熱帯地域で栽培され、一部の農園は熱帯雨林の破壊、生態系の破壊、泥炭地火災による温室効果ガスの排出、農園労働者の人権侵害などの問題を抱えていることが指摘されています。
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