売り上げ増にフロントオフィス改革が必要な理由 顧客に新たな価値を提供するための体制とは

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PwCコンサルティング合同会社 濱田 隆 氏、PwCコンサルティング合同会社 荒井 慎吾 氏
人口減少で国内市場の縮小が見込まれる中、どうやって売り上げを伸ばし続けるのか。「顧客との接点を持つフロントオフィスとミドルオフィスの改革が必要不可欠」と提言するのは、PwCコンサルティング合同会社でBusiness Model Reinvention(ビジネスモデルの再発明)支援の取り組みをリードする濱田隆氏と、フロントオフィス改革チームをリードする荒井慎吾氏だ。その理由と企業が解決すべき課題について、両氏に話を聞いた。

「従来のビジネスモデルではもはや通用しない」

――消費者意識の多様化や国際情勢の変化をはじめ、経営の意思決定を取り巻く「変数」が増えていると、指摘されています。

濱田 はい。経営戦略を描くうえで欠かせない「先読み」の難易度はかつてないほど高まっているといえるでしょう。

濱田 隆 氏 PwCコンサルティング合同会社 執行役員 パートナー
濱田 隆
PwCコンサルティング合同会社
執行役員 パートナー ストラテジーコンサルティング事業部
自動車、テクノロジー、通信、金融業界を中心とした幅広い業界にてデジタル技術を活用した事業の立ち上げ・拡大や先進技術評価等に従事。現在、「ビジネスモデルの再発明」領域におけるPwC Japanグループのリーダーを務めている

荒井 人口減少によって国内市場のパイが減っていくうえ、海外からプレーヤーが押し寄せ、ディスラプションが起こりつつあるというのが日本の現状です。従来のビジネスモデルでは通用しなくなるという危機感を募らせている企業は明らかに増えていますし、私たちもそういったご相談を多く受けています。

荒井 慎吾 氏 PwCコンサルティング合同会社 上席執行役員 パートナー テクノロジー&デジタルコンサルティング事業部
荒井 慎吾
PwCコンサルティング合同会社
上席執行役員 パートナー テクノロジー&デジタルコンサルティング事業部
テクノロジーを活用した企画構想から、DXに関連する企業・組織・オペレーション変革の実行支援に従事。現在、テクノロジー&デジタルコンサルティング事業部とフロントオフィス改革チームのリーダーを兼務している

濱田 いわば、既存の価値を低下させ、新たな価値をもたらすディスラプティブイノベーション(破壊的イノベーション)が起こっている状況です。そうした大波に対抗するためにも、自ら新たな価値を創造して売り上げを伸ばすことができるビジネスモデルに挑戦していく必要があります。PwC Japanグループでも、グループ全体でBusiness Model Reinvention(ビジネスモデルの再発明・以下、BMR )という大きなテーマに取り組んでいます。

――「ビジネスモデルの再発明」に取り組みながら、足元の売り上げも伸ばしていかなくてはなりません。

濱田 一気にすべてを変えるのは現実的ではありません。事業開発部門などでPoC(概念実証)を行うなど、小さく始めて徐々に広げていくことが有効です。

一方、いざ事業としてスケールさせようとすると壁に突き当たってしまうケースも少なくないでしょう。その理由を突き詰めると、顧客との接点に行き当たります。やはり、顧客と接点を持つセールスやカスタマーサクセスなどのフロントオフィスや、フロントを支える商品企画や生産管理、業務システムといったミドルオフィスを変革することが、時代の変化に対応できるビジネスモデルを生み出すうえで必要不可欠となってきています。

荒井 その際、要注意なのは、ファンクション単位の変革にとどめないことです。例えばCRMの導入といった個々の業務機能の変革は、これまでも行われてきました。しかし、ビジネスモデルを再発明して顧客への提供価値を新たに生み出し、最大化するには、一部の機能だけでなく関連する複数の部門に横串を通しながら、大きな変革をしていくことが求められます。

迅速かつ柔軟なチーム編成を可能にするPwCのカルチャー

――PwCコンサルティングでは、フロントオフィス・ミドルオフィスの変革をどのように支援しているのでしょうか。

荒井 関連する複数の部門やさまざまな組織の再編、業務プロセスの見直しが必要ですので、フロントオフィス改革チームには、多様な専門性を持つメンバーが参画しています。具体的には、テクノロジーコンサルティング、顧客接点の変革を支援するカスタマートランスフォーメーション、事業変革を支援するビジネストランスフォーメーション、戦略策定を支援するストラテジーコンサルティングなどです。

同じように、分野の異なる専門家が集う組織横断型イニシアチブとして活動するBMRのチームとも緊密に連携し、ビジネスモデルの再発明とフロントオフィス・ミドルオフィス変革を同時に支援できる体制を整えています。

濱田 PwC Japanグループには法務、税務、監査、M&Aを専門とするファームがあり、世界約150の国・地域のPwCグローバルネットワークともシームレスに連携しています。

企業変革で求められることに応じて、こうした多様な領域のプロフェッショナルを迅速かつ柔軟にアサインできることが大きな強みになっています。フロントオフィス変革の際、いかに顧客へ新しい価値を届けるかを考えると、商品企画からセールスといった流れだけでなく、税制や法規制も踏まえなくてはならないからです。

特に法規制は欧米の動きも大きく影響しますので、PwCグローバルネットワークとのつながりは、経営戦略を描くうえで欠かせない「先読み」のインテリジェンスを磨くのにも有効です。

荒井 どのような取り組みでも同じですが、企業変革の段階に応じて解決すべき課題は変わります。それに合わせてチームの陣容を随時入れ替えます。例えば、初期は企画などビジネスに強いメンバーが多く参加し、徐々にテクノロジーに強いメンバーが増えていくといった形です。クライアントの新たな価値創造に向けて、各領域のエキスパートが業種や業界を超えて結集し、真摯に考え、伴走しきることができるのが私たちの強みです。さらに、チームメンバーの仲の良さもクライアントベネフィットにつながっていると思います。

「吊るし」のソリューションでは変革を実現できない

――「仲の良さ」がクライアントのベネフィットにつながるというのは興味深いですね。

濱田 もちろん、なれ合いの関係ではありません。PwCは組織基盤の理想的な状態を「Trust(信頼)」「Unity(結束)」「Focus(集中)」と表現しています。実際、お互いに信頼関係があるので、遠慮なく意見を言い合えます。PwCはチームや部門はもちろん、コンサルティングや法務、税務、監査など各法人も超えて協働するカルチャーも根付いているのです。

荒井 ですから、チーム同士の連携もスムーズですし、グループ内の会計士や税理士、弁護士ともスムーズに話ができます。クライアントを支援する際は必ずイグジットを定めますが、そこにスピーディーにコミットできるのはPwCの体制が大きいと思っています。

濱田 コラボレーションによるさまざまな専門性の掛け合わせだけではなく、クライアントからは「泥くさく取り組んでくれて感謝している」との声をよくいただきます。変革の段階に合わせて対応をカスタマイズし、1つひとつ成果を積み上げているプロセスが評価されていると思っていますが、これを「吊るし」、つまり既製服のようなソリューションで実現するのは難しいでしょう。各領域のプロフェッショナルが多数いるからこそ、既存のテンプレートではなく、クライアントの求めに応じてソリューションをデザインすることができるのです。

PwCコンサルティング合同会社 濱田 隆 氏、PwCコンサルティング合同会社 荒井 慎吾 氏

――BMRチームとフロントオフィス改革チームとの連携で、具体的にはどのような支援をしているのでしょうか。

濱田 例えば、対面販売が当たり前だった商品のEC販売を支援しているケースが挙げられます。対面販売の場合、商品を店舗に卸すのがフロントオフィスの仕事です。しかしEC販売となると、サイトを準備してSNSの運用をするといった仕事もしなくてはなりません。

従来の営業部門にはなかったノウハウですし、今まで以上にフロントオフィスとミドルオフィスの連携が重要となります。ですから、カスタマートランスフォーメーションやテクノロジー&デジタルコンサルティングのチームも参画しているフロントオフィス改革チームとの連携が有効でした。

荒井 過去には金融機関の支援として、AIなどのテクノロジーを活用した融資審査の自動化などを含む、顧客接点に係る体験価値の最大化を実現してきました。それによって、短時間かつ少ない人数でより精度の高い審査ができるようになり、顧客体験を大きく向上させることによってクライアントに大きなベネフィットを提供できています。

また、ゼロベースで新規事業の創出を支援した事例もあります。今後の市場縮小が確実視される業種でしたが、アセットを生かした新規事業を構想し、販売チャネルや決済の仕組みを構築してローンチし、事業をスケールさせるところまでお手伝いしました。これらはまさにBMRチームとフロントオフィス改革チームとの連携により実現することができたケースです。

失敗を生かし、「手段の目的化」を防ぐために

――逆に、どのような状態だと失敗に陥りやすいのでしょうか。直面しがちな課題をお聞かせください。

濱田 冒頭にお話ししたように、小さく始めることは有効ですが、成果が出てもスケールできなかったり、失敗をそのままにしたりすることはよくあります。

特に後者は、タイミングが合わなかっただけというケースも多く、「あれを残しておけば今、役に立ったのに」と話すクライアントもいます。失敗を捨てるのではなく、いつでも生かせるようにすることが、ビジネスモデル再発明のサイクルを定着させるうえでも重要です。

荒井 「手段の目的化」にも陥りがちです。例えば、新たな顧客体験を創造するためにEC展開を決めたのに、いつの間にかECの仕組みを入れることを目的としてプロジェクトメンバーが動いてしまう。なかなかスケールしないのはそういう理由もあると思っています。

とりわけフロントオフィスの領域は、生成AIやデータドリブンといったキャッチーなキーワードが並びがちです。プロジェクトにもそうした名前が付けられてしまい、いつの間にか参加メンバーも「生成AIのプロジェクト」と認識してしまいます。そもそも何を目的としているのかを見失ってしまうと、やはり失敗しやすくなります。

濱田 そうなりやすいからこそ、一歩引いた立ち位置で見られる私たちのような第三者のコンサルタントの存在意義があると思っています。クライアントと同じ視座で、特定の部門に偏ることなく、いろいろな角度から「あるべき姿」を示せるのは強みだと思っています。そういう立ち位置を生かして、クライアント社内の「同志探し」のお手伝いをすることもあります。

荒井 変革を組織内に広げていくうえで、変革の意義を適切に伝える存在は重要です。組織が大きく、グローバルにも広がっている場合はなおさらではないでしょうか。

濱田 残念ながら、日本の1人当たりの生産性は高くありません。海外からの脅威に対抗するためだけではなく、日本全体の経済力を上げるためにも、ビジネスモデルを再発明して売り上げを伸ばしていくことが企業に求められています。PwC Japanグループは、全力でそのご支援をしていきますので、ぜひご相談いただきたいと思います。

「ビジネスモデルの再発明」について詳しくはこちら