未来創造型コンサルが「変革の機運」を醸成する訳 「望ましい未来を可視化」する本当の効果とは

「先読み」の難易度は、かつてなく高まっている
――多くの経営者から「先が読めない」という相談が寄せられていると伺いました。
濱田 さまざまな領域でディスラプションが起きているのが背景にあると考えています。いつ従来の事業モデルが破壊されるかわからないという不安が大きいのではないでしょうか。
日本国内にいるとそれほど感じませんが、海外に行くと著名な企業でも浮き沈みが激しく、サービスや製品のはやり廃りのサイクルもどんどん速くなっています。加えて、国際情勢の変化に伴うさまざまな地政学的リスクや、それによってもたらされる市場の変貌など、「変数」が多すぎて、先読みの難易度はかつてないほど高まっています。

PwCコンサルティング合同会社
執行役員 パートナー ストラテジーコンサルティング事業部
自動車、テクノロジー、通信、金融業界を中心とした幅広い業界にてデジタル技術を活用した事業の立ち上げ・拡大や先進技術評価等に従事。現在、「ビジネスモデルの再発明」領域におけるPwC Japanグループのリーダーを務めている
三山 先読みが難しくて、事業戦略を立てられないという悩みをよく聞くようになりました。「10年後を見据えた戦略を練っていても、社内からは現状の改善の延長線上にあるものしか出てこない」と話された経営者の方は、「ゲームチェンジを起こすような未来を描かないと、今後は生き残れない」と危機感を募らせていました。私がリーダーを務めるFuture Design Labは、そうした先読みのニーズに応えるため設立されました。

PwCコンサルティング合同会社
執行役員 パートナー ストラテジーコンサルティング事業部 Future Design Lab
未来創造型コンサルティングを手がけるFuture Design Labのリーダーを務める。とくに2030年~2050年ごろの未来世界の創造と、それを応用したバックキャスト型の価値共創プログラムを数多く手がける
濱田 今の事業をそのまま続けても、将来の事業構造の最適解にたどり着けないという認識は、多くの経営者が持っています。現在、PwCコンサルティングだけでなく、監査法人や税理士法人、弁護士法人などの専門ファームを含むPwC Japanグループ全体でBusiness Model Reinvention(ビジネスモデルの再発明・以下、BMR)という大きなテーマに取り組んでいるのは、そうした現状に対応するためです。
創造性豊かなデザインとロジックで描く「未来」
――先読みのニーズに対応するFuture Design Labと、ビジネスモデルの再発明を支援するBMRのチームは、どのように連携しているのでしょうか。
三山 Future Design Labが提供するのは未来創造型コンサルティング、一言でまとめると、クライアントにとって「望ましい未来」をデザインしています。もちろん、蓋然性は極限まで追求しますが、未来のことなので検証はしきれません。そのため、予測の精度だけを追求するというよりは、未来のイメージを表現することに力を注いでいます。
これは、ロジックを積み上げていくコンサルタントだけだとできません。過去のデータとつながっているとは限りませんし、かといってSFの要素が入った荒唐無稽な世界観では意味がありません。そのため、チーム構成はコンサルタントとデザイナーが半々。両者の議論をスパークさせることで、ロジックの積み上げを超えつつも夢物語ではない未来をデザインしています。
他方で、デザインした未来を具体化していくのは、戦略コンサルティングの領域です。Future Design Labが未来をデザインし、そこからBMRのチームがバックキャストして具体的な手段を提案しています。
濱田 「望ましい未来」を創るための戦略立案だけでなく、それを実行するうえで必要なM&Aや対応すべき税制、必要な組織編成といったプロセスを私たちBMRのチームが担う。Future Design Labと連携することで、クライアントに提供する価値を高めることができるのです。
なぜ、私たちBMRチームが広範なテーマに対応できるかというと、監査やディールアドバイザリー、税務、法務といったPwC Japanグループのメンバーファームでチーミングしているからです。それがPwCの強みになっています。
潜在的な変革のうねりを引き出す効果も
――具体的には、どのような価値提供を実現しているのでしょうか。
濱田 BMRという視点から重視しているのは、クライアントの変革機運を高めること。変革に立ち向かう仲間をたくさんつくらないといけません。
しかし、ペーパーだけでは響きません。Future Design Labがデザインした未来のストーリーを動画やプロトタイプで可視化して提示することで、よりわかりやすく伝わるのです。さらに、「望ましい未来」をイメージしながら、従来とは異なる収益向上のプロセスを体感できるようなワークショップを開催することもあります。Future Design Labとの連携によって、これまでできなかった新たな取り組みもできるようになってきました。
三山 物理的なプロトタイプをつくる場合も、BMRのチームと連携することで、アジャイルに取り組むことができます。Future Design Labでは、0→1(ゼロイチ)の未来創造だけでなく、1→10(ワントゥーテン)の実装にも対応できるプロフェッショナルをそろえていますので、ゼロから一気に実装まで取り組むことも、フェーズに合わせたご提案をすることも可能です。
表現手法も工夫を重ねています。実際、「イマーシブな未来を見せてほしい」というクライアントからのご要望は少なくありません。確かに、「こんな未来が実現したらすばらしい」という感覚を共有できれば、全社でそこに向かっていくことができるでしょう。そのため、3Dモデリングによる未来の都市モデルの作成やCGを駆使するなどして、「望ましい未来」を可視化しています。
濱田 Future Design Labの表現手法や発想は実に創造性が豊かです。そこに、BMRのチームが適切な翻訳をしながら、足元でどんなアクションを取るべきか整理をしていくと、クライアントもイメージがどんどん膨らんでいくんです。そうして、クライアントが自分自身の言葉で未来を語れるほどにコンディションが上がっていくのだと感じています。
――従来は現状の延長線上でしか未来をイメージできなかったのが、非連続な未来を描けるようになるということでしょうか。
三山 そういう効果はあると思います。例えば、組織や人材、デジタルインフラといったテーマの場合は、中堅層のリーダーと取り組む機会が増えているのですが、想像以上にドラスティックな未来を思い描いているんですね。例えばIT部門であれば、「プログラミングがなくなる可能性もあるはず。そうなったときどう変わるべきか」といった発想に出合うことが珍しくありません。
ですから、私たちがすべてをご支援するというよりも、クライアントの社内で眠っているアイデアや考えなどが顕在化されることで変革のうねりを引き出し、広げていく役割が求められているのではないかと感じています。
小さな成功を積み重ね、モメンタムを形成していく支援
――そうした変革に取り組む際、つまずきやすいポイントはどこにありますか。
三山 先ほどのように、壮大な夢を描きたいというニーズは高い。その一方で、早期に成果を求められることが少なくありません。しっかりと取り組めば新製品や新しいサービスが直面する深い溝を突破できたと思われるケースでも、すぐに失敗の烙印を押してしまいがちです。小さく始めて小さな成功を積み重ねて、変革のモメンタムを形成することが重要だと思います。
濱田 実際、早期の成果を求めすぎて頓挫したプロジェクトは多いのではないでしょうか。しかし、失敗の烙印を押されていても、実は有効なアセットが残っているケースは少なくありません。「いつ誰がどのように何をしたのか」を掘り起こし、「失敗バンク」としてデータベース化しておくのも1つの方法です。
ビジネスを取り巻く環境は刻々と変わっていますので、実はそういったアセットが、新しいディスラプションの種となる可能性も十分にあります。逆に言えば、過去のプロジェクトをしっかりと整理しながら、ディスラプティブのポイントがどこにあるかを探索する活動はやめてはいけないと思います。

三山 日本は労働人口の減少と高齢化が加速していますので、今後はさらに社会保障費が増大します。すなわち、社会全体として新たな産業に投資する余力がどんどん失われるおそれがありますので、今が新たなS字カーブを創出する最後のチャンスかもしれません。だからこそ、今、その企業にとっての「望ましい未来」を描き、大きな波を生む仕掛けづくりのお手伝いをするのが私たちの使命だと思っています。
濱田 ディスラプションが押し寄せる中で、影響を受ける日本企業はかなり多いのではないでしょうか。円安の影響もあり、「会社が買われてしまうのでは」と不安を持つ経営者も少なくありません。まだ投資余力のある今、新たなチャレンジに踏み出すことは重要です。
変革はジャンプ1回で実現できるものではなく、機運を醸成して体制やルールを変えながら少しずつ進んでいくものです。私たちは、あらゆるフェーズで順序立てた伴走支援を行いますので、ぜひご期待ください。