「一揆」と「SNS」歴史作家が語る驚きの"共通原理" 意図的に自分の名前を広めようとした首謀者も
垣根 研究の対象となるのは、世の乱れ始めた応仁の乱前後から、ぎりぎり戦国時代までという感じでしょうか。
呉座 戦国時代は一般の方でもくわしい人は多いですが、その前の時代は、意外と知られていません。
垣根 その知られていないところを、自分なりに腑分けしたというのが、この『応仁の乱』というわけですね。
呉座 そうです。知られていないところを、このような時代だと伝えたかったというのはあります。
「一揆」というのは基本的にネットワーク
垣根 この時代の特徴の1つである「一揆」については、以前に書かれた『一揆の原理 日本中世の一揆から現代のSNSまで』(洋泉社)でも触れておいでですね。拙著『室町無頼』も、まさにその一揆を背景とする時代を描きました。
当然、ご著書も参考にさせていただきまして、なるほど一揆というのは基本的にはネットワークであり、現代で言えばSNSなのだろうと思いました。
『室町無頼』のなかでは、のちに寛正(かんしょう)の土一揆(つちいっき)の首謀者となる蓮田兵衛という牢人が、才蔵という少年に「金よりも動くものはなんだ?」という問いかけをします。
お金の本質は動くこと/動かすことにあります。つまりは運動ですね。その金よりも激しく動くもの、世を回転させるものは、いわゆる情報しかない。『一揆の原理』のご著書で「それはSNSだ」と喝破されていて、納得がいきました。
呉座 ありがとうございます。
垣根 貨幣はAからBへ移動した時点では、ただの移動です。100円という価値が四方八方に100円で散らかるわけではなくて、100円はあくまでも100円。いわゆる1対1の等価交換です。
しかし情報は拡散することによって無限に運動と変質を繰り返す場合が多い。だからある種、とても危険な場合もある。
以前、管理人に勧められてFacebookを始めたときに、これは空恐ろしいリスクも孕んでいると思いました。考えようによっては、自分のあずかり知らない範囲まで話が拡散していくのは、とても怖いものです。