被害者から加害者に「母から虐待を受けた子」の半生 成人後も続く「負の連鎖」克服は容易ではない

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それまでほぼ母と過ごし、夜通しゲームばかりしてきた高島さんにとって、フリースクールの生活は新鮮なことばかりだった。多くの大人や同世代と交流しながら、のびのびと暮らすことで、精神的にも安定していく。

高校は、フリースクールと提携する全寮制の高校に進み、無事に卒業して母方の実家に戻る。それ以降は、服飾の専門学校に通い、その間に同級生とバンドを組み始めた。

専門学校を卒業した後は、就職する道を選ばず、バンド活動を続ける日々だった。アルバイトをしつつ、ライブや音源制作で日銭を稼ぐ日々。20歳で恋人ができて、彼女と同棲を始めたことで、親元を離れてもなんとか生活できていた。

バンドマン兼フリーターに、恋人にDV

しかし、彼女との同棲生活にも陰りが生まれる。1Kの部屋で暮らしていた高島さんは、家事のことで恋人と喧嘩を繰り返すようになっていく。

部屋の掃除をしない、共用のベッドに私物を置く、散財する――。付き合う年月が経過するごとに、喧嘩に発展することが多くなった。

そのうち高島さんは、恋人にDVをするようになる。恋人が小言を呈するたび、感情が抑えられなくなり、恋人に癇癪を起こしては殴ることも増えていった。

「本来なら、部屋が汚ければ、優しく指摘するべきですが、自分の感情をうまく伝えることができない。自分が危害を加えれば、恋人は怖がってそれ以上何も言わなくなり、自分の言う通りに従ってくれる。短絡的な考えから、DVをするのが癖になり、恋人とは破局しました。

なぜ、すぐに暴力を振るってしまうのか。率直に言えば、幼少期から母にそのように育てられていたので、そのほかに手段が思いつかなかったからです。

幼少期から母に虐待を受け、不登校で学校教育を受けることなく、根本的な精神治療やカウンセリングにもつながれなかった。フリースクールに通っていた時期は、精神的に安定していましたが、それはストレスのない環境に置かれていただけだと気づきました。

結局、自分の身に嫌なことが降りかかると、それを向けてきた相手に癇癪を起こし、暴力を繰り返してしまう。幼少期、自分の身に起きていたことが成人後も影響を与えたのではないでしょうか」

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