北海道新幹線「函館駅乗り入れ」実現の可能性 大泉市長出席のセミナーで何が語られたのか
新幹線の函館駅乗り入れは市の願いであったが、新函館北斗―札幌間の着工に向けた2011年末の並行在来線経営分離同意以降、乗り入れ問題が市議会で取り上げられることがなかったと言う。新幹線駅を新函館北斗(当時渡島大野)に置くことで地元了解が得られた際、それをもって函館駅には新幹線駅を設けないとの了解も成立し、以後は話を持ち出すこと自体がタブー視されたかもしれない。当時は人口問題にも今ほど切迫感はなかったと想像できる。
そうした中、北海道新幹線札幌延伸となれば、札幌直結の「北斗」が消え、広大な駅に乗り換えが必須の3両編成の快速電車しか来なくなる。その様子を思い浮かべれば、駅の活気も駅前の疲弊も容易にイメージできてしまう。それで大泉新市長は新幹線乗り入れを改めて持ち出した。
東京・札幌両方向からフル規格車両で
コンサルによる調査報告では、新函館北斗駅から車両基地に向かう線の途中で分岐する保守基地線を使い、そこに函館本線との渡り線を新設する。以後は函館まで函館本線の上り線を三線軌化、新幹線の函館乗り入れ列車は三線軌側を運行する。この地上設備により、ケース1=札幌方面から乗り入れ8往復、ケース2=東京・札幌の双方からおのおの5往復と8往復乗り入れ、ケース3=札幌・東京の双方からの乗り入れ(5往復と8往復)で、東京方面は札幌行き列車との分割併合(7+3両)を行う3方式を考え、それぞれ車両をミニ新幹線とフルサイズとして、合計6パターンを試算した。整備費は173〜186億円と算出されている。
前例のないフルサイズ車両の在来線直通の可否については、大泉市長の後に登壇した北海道大学大学院の岸邦宏教授が、今回のコンサルの調査以前の研究論文中に記している。それによれば、道内の線路は除雪に対応して複線間隔や線路脇の設備とも隔離が広く、乗り入れ区間には大きな河川の鉄橋やトンネルがないので、根本的な設備の作り替えをせずとも在来線上の運転が可能とみる。コンサルによるフル案も、同様に考えてのことだろう。
旅客需要は乗り換え解消と所要時間の短縮により、乗り入れがない場合の輸送密度予測5100人に対して約1300人の増が見込めるとし、来訪者の増、宿泊や飲食等の消費増による経済効果は年114〜141億円と弾き出された。そして6パターンの中から函館市としての絞り込みを行い、東京・札幌の両方から分併ナシで直通、車両はフルサイズという案で検討してゆくこととした――と述べた。
上記算出額には車両費が含まれず、JR北海道は当初「函館直通は妥当性が薄い」と評していたが、大泉市長はこの場でも、JRに車両調達費を求めない方向と表明している。
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