「受験商売」多くの親が洗脳される怖いカラクリ 東京だけでなく地方でも問題は多発している

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受験勉強は行きすぎてしまうと単純に一律にやらせるもの、ただ点数を上げるものになってしまう。それだけになると、今いったような別の道のアイデアや、人がやっていないことを発想する力はなくなってしまいます。

子ども同士もプレッシャーとなる言動を与え合っている

――親だけでなく、子ども同士もプレッシャーを掛け合う関係になることもあるようです。

東京の受験する子が多い地域の学校では、学校に来ている子のほとんどが受験をするということもあります。そうなると、4年生、5年生あたりからは休み時間のたびに「あいつは〇〇塾の〇〇クラスだ」とか、「あいつは〇〇中学を受験する」というような話題になっていく。

子どもたちは塾で、「この夏で人生が決まる!」みたいなことを聞かされてきます。もしも小6の夏で人生が決まるのならば、夏休みの間一日たりとも勉強をしたことがなかった僕が、教科書や入試問題に作品が掲載されるような作家になって、こうやってインタビューを受けているわけないですよね。

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けれども、それを洗脳のようにずっと言われ続ける。親や塾からだけでなく、受験する子ども同士が日々の生活の中でプレッシャーとなる言動を与え合っている。もっというと、そういう中で受験をしないという選択をした子たちも、プレッシャーはむちゃくちゃあると思います。すごく不健全なことですが、それに対して学校の先生は「やめろ」とは言えないわけです。

情報の分断もあると思います。もともと都会では近隣とのつながりが薄いですが、コロナ禍もあって、近所の家族同士で食事をするとか、地域の行事やコミュニケーションの機会はさらに減っています。ある塾の社員は「ターゲットは地方から来てタワマンに住んでいる親」と断言していました。

東京で育って、公立中学から公立高校に行きましたという親の場合は、自分の経験があるので中学から私立に行って何がそんなに違うのかと冷静に考えることができます。しかし、地方で生まれ育って東京にやってきた親の場合は、塾の先生から「私立の教育を受ければAIに負けないグローバル人材になれる」と言われたり、ネットで「東京の公立中学はヤバいらしい」「公立高校は怖いところだ」という噂を聞いたりしたときに鵜呑みにしやすいんだそうです。それである程度お金があれば受験させようと思う。

地域でコミュニケーションが取れていれば、近所でたとえば公立中学に行き、公立高校行って楽しく学校に通っているとか、良い子に育ってなんていう情報が入る状態にあれば、中学受験がすべてではないと思える。ところが今は、都会の場合は隣の子がどこの学校に行っているかも知らない。塾やネット上で得られた情報にあおられ、家計はカツカツだけれども、子どものためになんとかしようみたいな考えも生まれてくる。

生活がカツカツの中で高い学費を払うとなると、「この夏で人生決まるんだ!」くらいのことを思わないと、それだけの大金を出すつじつまが合わなくなってしまう。子どものほうも、情報源は学校の友達か塾ですから、そこで得られた情報を信じてしまいます。地域の中のコミュニケーションの分断が今の中学受験熱に拍車をかけているとも言えるなと、僕は考えています。

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宮本 さおり フリーランス記者

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みやもと さおり / Saori Miyamoto

地方紙記者を経てフリーランス記者に。2児の母として「教育」や「女性の働き方」をテーマに取材・執筆活動を行っている。2019年、親子のための中等教育研究所を設立。

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