80年代女子プロ描く「極悪女王」に思わず流れる涙 人間ドラマとゆりやん達の演技に引き込まれる
ひと握りの才能が生き残るプロの世界。その裏には、プロレス試合の体のぶつかり合い以上に激しい、ヒリつくような女性同士の意地とプライドの衝突がある。そして、そこは実力だけの世界ではない。
プロレスは、興行として成功させなければ、団体が存続しない。そのために、テレビ放送には絶大な影響力がある。プロレスの成功に不可欠なのは、スポンサーやテレビ局であり、彼らが求めるのはスターの存在だ。
だからこそ、試合の勝ち負けには政治的な力関係が働くこともあり、選手たちの間にはさまざまな鬱屈や屈折も生まれる。そして、スターは時代とともに移り変わっていく。そこには激情の人間ドラマが渦巻いている。
嫉妬や苦悩、葛藤しかない舞台裏
当時のスターだったジャッキー佐藤を破って、団体のトップに立ったジャガー横田(水野絵梨奈)は、クラッシュ・ギャルズの人気が出てくると自身の立ち位置が危うくなる。団体がクラッシュ・ギャルズをフィーチャーしようとするなか、自分は「かませ犬ではない」と横田が反発するシーンがある。
また、もともと正統派のプロレスラーを目指していた松本香は、同期であり親友の長与千種と研鑽を積んできたが、松本はまったく芽が出ない一方、長与はスターとしてどんどん大きくなっていく。そんななか、ある出来事がきっかけになり、松本はヒールの道を突き進むことになる。
そんな彼女たちの内面には、激しい嫉妬や苦悩、葛藤にあふれている。どんなに悔しくて苦しくても、ときにはプライドを捨てるしかない。それでも歯を食いしばって一生懸命に生きていく。
テレビ放送のゴールデンタイム枠で、血みどろの女性たちが闘うプロレスの流血試合が生中継されていた時代に、社会や組織、自身のプライドと闘いながら、必死に生きた女性たちがいる。
そんな女性たちの生き様を赤裸々に映すから、その映像にはとてつもなく大きな引力がともなう。
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