イギリス「政権交代」盛り上がりに欠ける根本理由 選挙結果が表した今のイギリスの複雑な状況
イギリスの有権者は今週、労働党に「地滑り的勝利」をもたらしたが、その勝利にはアスタリスク(注釈)が含まれていた。
キア・スターマー首相が7月5日、イギリス議会で圧倒的多数を獲得して就任したが、投票総数で見ると、同党が獲得した票は全体の3分の1に過ぎず、保守党に敗れた2017年の得票数を下回った。労働党はイギリス全土に進出したものの、その勝利はしばしば、不人気から議席を失った元首相リズ・トラスを含む保守党の敗北に取って代わられた。
イギリスの複雑さを表す選挙結果
有権者のけたたましい反乱は、今回の選挙における最大のメッセージだったかもしれない。労働党政権の新時代を切り開き、保守党を史上最悪の敗北に追いやり、公約を果たせなかった場合の危険性を現職議員に警告するものとなった。
すなわち、400万票以上を獲得した反移民の反政府政党「イギリス改革党」の台頭、主要政党の得票率の急落、過去数十年で最低の投票率、選挙争点としてのイスラエル戦争の再燃が、労働党候補者(スターマーさえも)を苦しめたのである。
スターマーはロンドンでは議席を維持したものの、イスラエルとガザ地区での戦争に対する労働党のスタンスに対する左派の怒りをぶつけた無所属議員の挑戦もあり、得票数は2019年の総選挙よりも1万7000票少なかった。
今回の選挙は、簡単には分類できない複雑なものとなった。地滑りではあったが、政治地図の単純な再編成ではなかったこと、中道左派に軸足は移ったが、ポピュリストの右派に貴重な足場を与えたこと、労働党の圧勝ではあったが、1997年のトニー・ブレアの圧勝のような陶酔感はなかったことなどがその証左だ。あるコメンテーターは5日の朝、「愛のない地滑りだ」と語った。