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政治・経済・投資 #野口悠紀雄の「震災復興とグローバル経済」

(第13回)アップルとソニー その差はどこにあるか

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先日、ある会議で次のような意見を聞いて、私は心の底から驚いた。

「アメリカ経済は、短期的利益だけを追い求める近視眼化の傾向をますます強めている。その象徴がアップルだ。独自の技術を開発したわけでなく、さまざまな既存技術を寄せ集めただけの製品で利益を伸ばし、ついには時価総額がアメリカ第2位になってしまった」というのである。

ここには、いくつかの重要な論点が含まれている。まず、「アップルが独自の新しい技術を開発したわけではない」という点について。

これは、そのとおりである。アイポッドの原型はソニーのウォークマンであり、アイフォーンの原型はNTTドコモのiモードだ。アイパッドに至っては、アイフォーンとノートPCの中間の製品というだけのことだ。タッチパネル方式もゼロックスが開発したものであり、アップルはそれをまねただけだ。

しかし、同じことは過去のさまざまな「新製品」について言える。自動車も「まったく新しい技術を作り出した」というわけではない。何百年も前からあった馬車に、ガソリンエンジンを載せただけのことにすぎない。アポロ宇宙船など、寄せ集め技術の最たるものだ。中核技術であるロケットは、11世紀の中国で発明された。

「まったく新しい技術に基づいて作られた製品」で私が思いつくのは、原子爆弾(これは「製品」というより兵器だが)とプログラム内蔵型コンピュータ(つまり現代社会に存在しているコンピュータ)くらいしかない。あるいは、半導体素子だ。最近の例ではLED電球である。

重要なのは、さまざまな技術の組み合わせから、従来はなかった新しいコンセプトの製品を作り出したことなのである。フォードが自動車を発明したわけではないが、個人でも買える価格の自動車を生産することができた。そのために、人類の生活や都市形態を一変させるブレイクスルーになったのである。アイフォーンは、「スマートフォン」という新しいジャンルの製品があることを示した。そして、われわれの日常生活だけでなく、ものの考え方すら大きく変えようとしている。

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