池上彰「第三次世界大戦は起きない」と考える理由 人類が「2度の世界大戦」から学んだこととは

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イスラエルがハマスを攻撃すると、アメリカは地中海に2隻の空母(航空母艦)を展開しました(いまは引き揚げています)。この表現だと空母2隻だけと思われるかもしれませんが、実状は違います。空母を含む軍艦が20隻です。これはアメリカの空母が「空母打撃群」というチームを組んでいることによります。

空母は戦闘機や爆撃機を載せていますから攻撃能力に優れていますが、防御能力は脆弱です。そのため、周囲にミサイル巡洋艦、駆逐艦、潜水艦、補給艦などを配し、大体10隻でひとつのチームを組んでいます。ということは、空母2隻=2チーム・軍艦20隻の計算になります。驚異的な攻撃能力です。

【2024年6月18日11時00分追記】初出時、記載に誤りがあり、一部訂正いたしました。

空母から戦闘機や爆撃機が発艦し、ミサイル巡洋艦が一斉に数百発のミサイルを発射すれば、核兵器を使わなくてもテヘランは壊滅します。アメリカは、その力をイランに見せつけたのです。だからイランは、イスラエルに対して非難の声を上げるけれども、自ら手を出そうとしません。地中海を遊弋する2隻の空母、この現実が戦争の抑止力になったのです。

国際航路の安全を確保するための報復攻撃

その代わりイランは、支援する武装組織を動かして“ちょっかい”を出しています。武装組織とは、レバノンのヒズボラやイエメンのフーシ派のことです。たとえば2023年12月12日、フーシ派が紅海でノルウェー船籍のタンカーをロケット砲で攻撃しました。この船はイスラエルの港に向かっており、それを妨害するのが目的でした。

こうした攻撃が続いたため、アメリカ軍とイギリス軍がイエメン領内にあるフーシ派の拠点に報復攻撃を行いました(2024年1月12日)。アメリカの国防総省は「フーシ派の攻撃能力を低下させた」と発表しています。攻撃の応酬で中東の緊張感が高まりましたが、この報復攻撃はアメリカとイギリスがイスラエルを支援するというより、国際航路の安全を確保する性格のほうが高いと言えます。

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